無意識日記々

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花のような笑顔、光のような涙

『初恋』のトラックがリリースされた今、ドラマ花晴れを観てる人はまた減ってしまった気がしないでもないが、今回もまた『初恋』の大盤振舞だった。そのままキンプリのエンディングテーマに雪崩れ込む構成は今や水戸黄門並みの様式美だ。

杉咲花の顔面は地上波テレビドラマの主役を張るに相応しい冗談みたいな可愛さだが、立ち姿や走り姿がどうにもコミカルで、あぁこりゃ天性のコメディエンヌだなと痛感する。どうにもドラマが中盤を過ぎてシリアスな場面が増えている為そのギャップが余計目立つ。とはいえ、神楽木晴と冗談を言い合っている力の抜けた感じが江戸川音の自然体だというのなら、キャスティングとしてはバッチリなのだ。ただ立っているだけでどこか可笑しい。喜劇役者なら喉から手が出る程欲しい才能だろうな。杉咲さんはどんどん喜劇に出るといい。それが本人の意に沿うかどうかは別として。

我らが宇多田さんはその正反対で、何をしててもシリアスに持っていってしまう。生き方の問題と言われたらそれまでなんだが、大雪原でふざけてはしゃぎまわっていてもどこか頭の片隅で「いろんな事があったんだろうなぁ」と考えたり、あまりの可愛さに感動して涙腺を刺激されてしまったり、どうにもこうにも如何ともし難い。

くまちゃんと戯れていた時もそうで、微笑ましいのを通り過ぎてどうにもその心理的背景にまで心を巡らせてしまう。頭の回転が早く、人を笑わせるような事を繰り出せる側の人間なんだが、どちらに転んでも喜劇にも悲劇にもなりえないというか。劇的な人生に憧れる平凡な人生ではなく、作家が参考にするかもしれないほどの劇的な人生を送っているからか。『初恋』にはその圧倒的な人生のリアリティが込められている。自叙伝かは兎も角、ドラマとの対比は依然鮮烈なままである。