無意識日記々

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word of mouth

狭いジャンルの話しか知らないが、世界の中で日本で特定的に人気のないジャンルというのがある。メタルでいえばゴシックやドゥーム、プログレでいえばポンプロックといった所の人気が、日本では取り分け低い。

これはなぜかとよく見てみると、ジャンルを代表する"大物"バンドが、70年代に来日し損ねているのである。代表格がBlack Sabbathで、欧米ではスタジアムでは狭い位の人気を誇るが、日本では同時期のDeep Purpleの人気に遠く及ばない。欧米ではDeep Purpleの人気は、Black Sabbathに遠く及ばない。逆転現象が起きている。

それは70年代の話だが、その後何が起こったのかといえば、Deep Purpleの音楽性を踏襲した後輩たちの作品は日本盤が発売され来日公演も実施されるようになり、Black Sabbathのフォロワーたちは日本市場で見向きもされなかった。

単純に、Purpleの音楽性に日本人がフィットし、Sabbathは合わなかった、とも考えられる。が、私は違う風に捉えている。70年代にSabbathが来日できなかったのはドラッグの問題もあったらしいが、仮に来日していたらとんでもないインパクトを日本市場に齎していたんじゃないかと推測する。それこそ、歴史が変わっていたかもしれないと思う。人の好みが市場を作るというのも確かかもしれないが、強烈な音楽は、そこから人を耕していく。それには、生で観て生で聴く以上の事は存在しない。

ちょっと話が大きくなった。読むのならここからでいいや(笑)。UtaDAアメリカの各地でライブをやった事。ロンドンの二夜を売り切った事。確かに、たった数百〜千数百の人間の話だが、彼らはUtaDAを直(じか)に目撃したのだ。その後、彼らはUtaDAについてどれ位語っただろう。

その地を訪れる、というのはとても大きい。今日ウチの田舎に加山雄三がコンサートにやってきているらしい(今まさにアンコールの最中だろう)が、あんなド田舎にあんな有名人がやってきたとなれば、このたった一晩の印象が、この地ではずっと語り継がれる事になるのだ。次にやってこなければこないほど、ずっとそれは語り継がれる。

ホノルル公演以外の事は知らないが、In The Fleshでの光のパフォーマンスはどの晩も素晴らしかったものと推測する。日本での抽選だらけのライブと違い、ラジオで聴いたCome Back To Meを歌っている歌手が近所に来たから見に行ってみた、という気軽な人もなかには居たのではないか。

そういう人たちが、次に光がアメリカやイギリスの市場でヒットを飛ばした時に、彼らはこう言うのだ。「彼女なら、一度みたことがあるよ。いいライブだった」と。

ネット時代は評判なんて検索すれば手に入ると思いがちだ。いや勿論それは真実なのだが、人の重い腰を動かす為には知人の口添えの方がもっと威力を発揮する。その差は思っている以上に大きい。

果たして、光が2010年に蒔いた種は、そのまま萎んでしまっているのか、大きく花開かせているのか、はたまた咲き誇る日々を待ち雌伏の時を過ごしているのか。これはなかなかわからないが、次に行ってみたらぐわんと聴衆が増えていて吃驚した、という展開を何となく想像してしまうのであった。