無意識日記々

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怒涛の4月が終わってひとやすみ


あー怒涛の4月が終わったのか。ツアーの申し込みもこれで一区切りということで、ある意味ここから当落発表までの2週間は心休まるかもしれん…けどこれは性格に依るか。自分は「足掻いても仕方がないことは気にしない/諦める」を選んでしまう方なので「後は野となれ山となれ」モードでいられるが、「当落どっちでもいいから決まってくれないと落ち着かない」という人は落ち着かないだろう。それも含めて人生やね。


オリコンによるとここまでの『SCIENCE FICTION』の累積は25万枚。シンプルに、日本国内ツアー収容人数の最大値を上回る枚数が売れてしまった。…という言い方からも分かる通り、出来るだけコンサートチケットの当選確率を上げたい向きからすれば、シリアルが封入されているCDは1枚でも少なく売れて欲しかった。一方で自分は何枚も買い増す始末。裏腹というか矛盾というか、なんとも不健全な時間を過ごしたなと自分でも思う。


大体、応援するアーティストのCDが「どうか売れませんように」と願うのは、余りにも情けないというか、自分が嫌いになるよ。「別に売れなくても構わない」と「売れたら嬉しい」は両立するからね。宇多田ヒカルが売れてるから有名だから応援してるとかではないのでね。中にはそういう人も在るだろうしそれはそれでこちらも参考になるので有り難い存在なのだが自分はそうじゃないので。それに、ヒカルも売れたら嬉しそう。周りで頑張ってるスタッフの皆さんが報われるのをみるのが喜ばしいのだろう。なのでこちらとしても、「一枚でも多く売れますように」と祈るのが自然な姿であって欲しかった。なお、「売れたら嬉しい」からといって「売れる為なら何でもしよう」にも、ならない。そりゃね。


そこから抜けて、やっと売上を喜べるようになって、それが今嬉しいとこ。もう応募できないし、後は抽選だからね。当落が決まったら、U-NEXT枠とか、出来れば綾鷹枠や伊藤忠枠も出てきて欲しいとこ。これでサントリーが相乗りしてきたら面白いんだけど。1999年当時東芝EMIのアーティストでありながらSONYのMDのCMに出てしまったヒカルでも流石にそこまでは…?ん?xbox?ナンノコトカナ??


幸いなことに、既に何度か触れてきてるテレビ放送も一部まだネットで観れるものがある。テレ朝系の「EIGHT-JAM」と、TBS系「CDTV LIVE LIVE」出演時の『First Love』だ。前者は5月5日まで2回分とも観れるし、後者は歌のみが5月22日までの限定公開。ゴールデンウィーク中にゆっくり観る人も多かろう。この時期が書き入れ時の皆さんはそれが終わったらゆっくりどうぞっ。…って「EIGHT-JAM」の方は配信終わっちゃってるかもなのか…そちらはお早めにっ。


そんなこと言ってるおいらもまだNYLONのインタビュー読んでる途中だもんね。いつもなら考えられないのだけど、ついついSF本編を聴いてしまったりテレビ出演のインタビューを振り返ってしまったりで。それに、折角なのでと英語の方で読んでるから時間が掛かってるというのもある。結構訳が正確で嬉しい。日本語圏外/英語圏内の方は電子書籍で購入できるなら是非こちらをどうぞ。日本語のニュアンスもちゃんと含まれているよ。


一方SFマガジンだが、科学を冠するそんな名前してるのに電子書籍版が見当たらないのが笑った。こういう技術の最先端(でもないな、もう数十年前からあるもんな)に手をつけてないあたり、読者層や作り手側の平均年齢が高いのだろうか。外で読めないのでなかなか読み返せないけどこちらのインタビューは読了済み。ただ、そこまで濃い内容でもなかったので取り上げるかどうかは微妙なところ。…この判断も、普段では考えられないほど贅沢!


ということで、暫しの間、まぁ今迄とさほど変わりないのですが、怒涛の4月をもう一度丁寧に振り返っていきたいところですかね。まぁ、流石にここから暫くは新しいネタは無いと思うんだけど、はてさて。ともあれ、今月もこのキャッチコピーでいきますか。


「自分のリズムでいこう。」!

Her Sci-fi second verse takes us our second birth !?


「EIGHT-JAM」は話の構成も素晴らしかった。みなさんお馴染み『One Last Kiss』でA.G.Cookがやらかしたエピソードから「セカンドバース(2番Aメロ)」をキーワードにして流れるように『道』の『調子に乗ってた時期もあると思います』についての質問へ。自分も観ながら「なるほどこのあと『道』の話に繋げるのだな。上手いな。」と思いながら見ていた。そう、ヒカルさんの歌詞の口調、急に変わるよね。最近ではこれに更にブーストが掛かっている。


例えば、『BADモード』。1番Aメロ(ファーストバース)では


『いつも優しくていい子な君が

 調子悪そうにしているなんて

 いったいどうしてだ、神様

 そりゃないぜ』


と歌っている。1番Aメロ最後で『そりゃないぜ』とそこまでからはあまり想像がつかない語尾が来てて「2番Aメロまでは同じ口調だろう」と油断したリスナーに対して早くも先手を取っている。もう既に見事なものなのだが、そこからの2番Aメロが更にエグい事になっているのは皆様もご存知の通り。


『メール無視して ネトフリでも観て

 パジャマのままで

 ウーバーイーツでなんか頼んで

 お風呂一緒に入ろうか』


1番の歌詞が描くシチュエーションは「人と人」だった。『神様』にも呼び掛けてはいるけれど、基本的にはヒカルさんがリスナーに、或いは想い人(親友でも息子でも)に優しく話しかけるという“舞台設定のつもり”でこちらは歌を聴いていた。そこにいきなりメール/ネトフリ/パジャマ/ウーバーイーツ/お風呂と、「目に見えるモノの名詞」を連発して視覚的に訴えてくる。「人と人」から「モノとモノとモノと…」への転換。小説でやられても面食らうヤツである。


番組内でヒカルも言っていたように、2番Aメロというのはリスナーが最も油断している時間帯だ。サビの高揚感が落ち着いて一息つく、というのと、無意識裏に「次はまたさっき聴いたAメロと同じようなメロディと歌詞が来るだろう」という予測をするからだ。一息と予測。これを見逃さずにヒカルは言葉を畳み掛けてくる。ここに至るのは、先ほど述べたように『そりゃないぜ』が利いている。宇多田ヒカルに慣れたリスナーは、ひとつの曲の中であちこちに揺さぶられるのに慣れているから、この曲ではなるほど、思いやり溢れる優しいヒカルさんと、守ってくれる頼もしいヒカルさんのギャップを振り幅にしてるんだなと何となく思わせてからのネトフリとウーバーイーツなのだ。横の振り幅に身を委ねていたら縦の落差にいきなり翻弄されるような。もっと抽象的な空間(君と僕、私とあなただけの、背景に何もない場所)に居ると思ってたのに気がついたらリアルな部屋に居た!? 斯様な場面転換が自由自在なので、タイムスリップやテレポーテーションのような感覚を与えてくれる歌詞になっている。


まぁ、しかし、『BADモード』の恐ろしさ、真骨頂は更にここからだよね、これも皆さんよくよくご存知の通り。優しさとかっこよさの振り幅、急な場面転換の落差ときて、さぁ2番サビが来るのかと身構えるそのほんの僅か前に急にリズムがフェイドアウトしてアンビエント・パートに1分間突入する。おかしい。もう2年以上前の曲だけど、どう考えてもおかしい。タイムトラベルやテレポーテーションならまだ「この世界」の中で移動している感じだが、このいきなりのアンビエント突入は最早異世界転移・異世界転生だよね。気がついたらエルフの里の最奥地の泉のほとりに放り出されてたみたいな、そんな感覚に陥ったよね。


「優しさ」から「カッコよさ」へ


「人と人」から「モノとモノ」へ


「この世界」から「異世界」へ


と、それまで暗黙裡に前提とされていたものが悉く突き崩されて新しい世界へと誘なってくれる…ふむ、後付けも甚だしいけれど、ヒカルさんの書く歌詞が「SFっぽい」というのは、こういう見方で見直してみればなるほどと唸らざるを得ない。今まで思いもみなかった視点/価値観/世界観をみせてくれる事こそ、SFの醍醐味ですからね─と、星新一筒井康隆小松左京を(それぞれほんのちょっとずつ)読んで育った身としては今更ながらに痛感するのでありましたとさ。

インタビュー、既に歌詞。


2週目の「EIGHT-JAM」も充実した時間だった。どうせインタビューするならミュージシャンに直接訊いて貰えれば…とも思っていたが、なるほど、事前にしっかり複数のミュージシャンから質問を募っておいて代表者が纏めて質問し、その返答を今度はスタジオに集めた当の質問者のリアクションを交えて放送する、そういうフォーマットだったのね。よく練られてるなぁ。番組としての経験値を感じました。…というのが、普段この番組を観てない人間の感想なのでした。


また、このような内容だと、マニアには食い足りず一般視聴者にはわけがわからないという「帯に短し襷に長し」な所に落ち着いてしまう危惧もあったのだが、普段はどうか知らないけれど、質問者がもう殆どファン目線になるほどに偉大な(と言われてもヒカルは嬉しくないだろうけども)ミュージシャンが、一般視聴者にもわかる言葉で基本話しててくれたので、そういう危惧もクリアされていた。ここは番組フォーマットとの組み合わせがよかったのかもしれない。何れにせよ、こんな番組が地上波でずっと放送されてるの奇跡やね。



で。結局のところ、ヒカルにとっては質問への返答という切り口であっても、既にそれは作詞作業に近いことなのだなと痛感させられた2週でもあったかな。少しでも多くの人に伝わる平易な言葉で日本語を組み立てていく。その上語呂の良さなんかもところどころ天然でみせてくれていた。TVインタビューが時間という枠に縛られているのもまるで字数制限のようで、もうこんなのやっぱヒカルにとっては作詞だよね。なので、宇多田ヒカルの作詞術に興味のある人なら、たとえ例えば「NHK MUSIC SPECIAL」のような直接音楽に関係が薄い人生相談のような内容であっても、それぞれ興味深く聴く事が出来たのではないだろうか。


例えばそうね、『Electricity』の『between us』に関して


『なんか“うにゃ〜”ってなってる感じが好き』

『歪みとかそういうの』

『痒い所に手が届いた感じ』


なんて答えてたけど、『うにゃ〜』というこどもにも伝わる語感、それを客観的に見直した時の「歪み(ゆがみ)」という纏め方、そして「痒い所に手が届く」という定型文に落とし込む感じは……そうね、例えば『Fight The Blues』の


『くよくよしてちゃ敵が喜ぶ』

『明るいニュース聞かせてあげる』

『笑う門には福来る』


という歌詞の流れとかなり近い。「くよくよ」というこどもでもわかる言葉、そこからの「明るいニュース」という明快なワードチョイス、そして『笑う門には福来る』という諺つまり定型文に落とし込む流れ。…まぁ大体同じでしょ?


斯様に、インタビューの時点で既にヒカルの「作詞スタンス」は始まっている。そうそうないことだろうが、このインタビューのやりとりから将来の歌詞に繋がるやり取りもあったかもわからない。この仕事をした日もまた、宇多田ヒカルの貴重な1日のひとつだったのだからね。ほんに、70分もお疲れさんでした。

不憫かなにか?


『Electricity』、不憫コースに乗ってない? 大丈夫?


『何色でもない花』のスマッシュヒットぶりを全く予測できなかった私が今更何を言っても説得力がないのだけど、『Electricity』って、少なくとも『One Last Kiss』と同じくらいはヒットしてないとマズくない? めっちゃ凄い曲じゃね?


前も書いたけどその時と変わりなく、アテクシ『SCIENCE FICTION』を気に入り過ぎてしまって未だに『Electricity』をヘビロテしていない。てかまだ『SCIENCE FICTION』をシャッフルで聴いたことがなく、ひたすら中毒からマルセイユまで曲順通りにリピートし続けている。いつまで経っても、だから、『Electricity』は“アルバム曲”のままだ。


が、そんな風に全く特別扱いしていないにも関わらず、SFを一通り聴いた後圧倒的に印象に残っているのが『Electricity』なのだ。そりゃラス前だから記憶も新しいだろうと言われたらそれまでなんだけど、毎日朝起きて夜寝るまでの間、どこかで脳が休もうとすると途端に「エ・エ・エ・エ・レ・エ・エ・エク」という声が脳内にこだまする。完全に中毒じゃん!って思ってるうちにまたSFをリピートしてElectricityに辿り着きマルセイユを経由して『Addicted To You (Re-Recording)』、中毒に戻ってくるのだからよく出来てるなぁと他人事のように感心してしまう。そしてまたまたリピートが繰り返される。嗚呼、これもワームホールみたいなもんなのね。宇宙のトポロジーですね。(なんのこっちゃ)


この、気に入ってるか入ってないか以前に脳内にこびりついて離れない感覚、大ヒット曲の特徴でしょーに!? でも、『Electricity』、最新曲の割には影が薄いよね。伊藤忠綾鷹ほど出張ってないからなのだけど。あとMVないからね。これもなんだかんだで痛い。なのでついつい不遇とか不憫とか考えてしまう。ほんに、勿体無いなぁ。


でも、(SFでは)お隣のマルセイユだって粘りに粘った感あるよね。最初にリリースされたの22年1月だもんね。そこから八景島でビデオ作ってSpotifyで流してYouTubeで流して今回エディット作ってビデオも再編集して…それでようやっと今月ラジオのチャートなんかにも入ってきて。粘ってみるもんなのよ。


なので、『Electricity』はここから思いっ切り粘って欲しい。ヒットポテンシャルは過去最大…というのは、「日本語圏以外も考えた時」の話でさ。『Come Back To Me』以来のヒットになると思うけどねぇ。まぁツアーがアジアに留まったから、もっと長期に考えなくちゃいけないやつかもしれんけど。英語バージョン作ったり、エクステンデッド・ミックス作ったりアナログ出したり、そして勿論ミュージック・ビデオも作ったり…頑張りようは幾らでもある。


今回、綾鷹トラベに全部持ってかれたからなぁ。YouTubeみてみると、綾鷹トラベの再生回数が234万回で、『Electricity』のオーディオ・トラックが33万回か…まぁその数字は比較できるもんじゃないけど、それにしても、ねぇ?


こんな変わった“自滅”も珍しいんじゃない? 余りにもいろいろ充実し過ぎていて、最新曲に向けられるべき関心が分散されてしまってるって。あたし自身がそうなっているのだから言えた義理は微塵もないのだけどね。なのでここは頭を切り替えて、『Electricity』には長期戦を睨んでツアーを迎えて欲しいと、思ってます。ももももちろん、ステージで歌ってくれるのよね?? U-NEXTでの配信が決まったから、チケット落選しても観れるぞ! ちょっと一安心ですね。

"不適切な"歌詞たち


そういやこの度「NHK MUSIC SPECIAL」にて、ヒカルの『光』がテレビ初披露だったわけだけど、これNHKだったからできたということなのかな。なぜって歌詞に


『テレビ消して

 私の事だけを見ていてよ』


って出てくるんだもんねぇ。テレビ放送でテレビを消せと?? いや、日本のテレビ放送を代表するNHKだからこそ寧ろ気にしないといけないのか?? 他のこういう歌詞の歌はどうしてんだろね。そんなものがあるのかは知らないが。


逆に『Kiss & Cry』はNHKでは歌わないだろう…『今日は日清カップヌードル』って歌うからな。スポンサー色が強過ぎる。まぁそれを言うなら同曲はライブ・バージョンでは一旦不適切だとボツにした


『娘さんのリストカット


をしっかりと歌ってるね。これはラジオで流すのすら憚られたってことでしょうか。


優しく思いやりのある人柄として認識されている宇多田ヒカルさんだが、だからといって別に品行方正な方でもなくて。『BADモード』では


『Hope I don't fuck it up

 Hope I don't fuck it up again』


と歌った為Apple Music Radioではバッチリ消されて放送されていた。今回のSFでもこの曲のクレジットにはバッチリ[E]の字が刻印されている。この[E]はexplicit lyricsのことで、意味は


「《音楽》エクスプリシット・リリックス◆性的または暴力的な表現などが含まれているポピュラー・ソングの歌詞。」

https://eow.alc.co.jp/search?q=explicit+lyric


ということだそうで。一言で言えば「R指定な歌詞」って事ですね。



という風に結構危なっかしい歌詞がある宇多田ヒカルさんですが、最新曲である『Electricity』の


『そんな人類みんなに

 アインシュタインが娘に宛てた手紙

 読んでほしい』


という歌詞もまた、将来的にヤバい可能性がある。まだ現代では議論の俎上に乗っていないが、今後「電子情報に於けるフェイクニュースの拡散」に法的措置が取られる可能性があるからだ。「歌詞やん?」と誰しも思うところだが、いつの時代も規制派は政治的な存在なので、現実と虚構の区別とか実際に被害に遭ってる人の救済とかは興味がない。歌の歌詞だろうと対象になる可能性は十分にある。なので、まぁここの読者さんには馬の耳に念仏かもですが、こういう将来的に危なっかしい歌詞の歌はサブスクで済ませずにCDを購入しておきましょうねということでひとつ。って、通常盤でも4500円、ダウンロード購入でも3000円近くするのか…なかなかに悩ましいお値段ですねぇ。「タワレコ撮影させてもろたからご祝儀がわりに一枚追加。」とかやってる私は、自分の異常性に自覚的であるべきですね…。(話のまとめ方がおかしい(笑))