traveling発売10周年。普段そんなに考えないけど、これはかなり感慨深い。特に、宇多田共和国関係者は10年経つのかと思わずにいられないだろう。当時私まだ居なかったけど、あれから10年だと光にいえば彼女もグッとくるに違いない。お陰様で毎年この一週間、あの家族は祝いっ放しである。生きてるって、強い。
関係者以外何の事かわからない事を書いてしまった。話を戻そう。traveling10周年だ。
今や、この曲をLIVEでやらない事は考えられない。In The Fleshじゃやらんかったけど。そう言いたくなる位LIVE映えする曲だ。サビは勿論歌うだろう。『目指すは君!』って指ささなくっちゃいけないだろう。のちに「20代はイケイケ!」と宣言する光だが、ノリノリイケイケの決定版といえばtravelingだ。
何が凄いってワンワードリフレインがここまでキャッチーな所。全く他の邦楽にはみられない。小室哲哉も全盛期は英語リフレインの鬼だったが、何だかんだてツーワード、スリーワードだった(Self ControlからBe Togetherに至るまで。あ、鈴木亜美のね)。ワンワードを刷り込む力は恐らく邦楽史上最強の部類に入るだろう。
そして、そこから更に凄いのはイントロからアウトロに至る迄全くテンションが落ちない事である。特にDeep Riverアルバムの曲が最も顕著なのだが、イントロ、ヴァース、ブリッジ、コーラス、展開部、アウトロととにかくずっと張り詰めているのだ。
これより後、ULTRA BLUE以降はヴァースとコーラスのテンションに落差をつける傾向が強くなっていく。This Is Loveがその代表格だし、何より、最近作のGoodbye HappinessとCan't Wait 'Til Christmasは非常に際立ってヴァースとコーラスの落差が強調されている。そのしなやかなダイナミズムが成熟であり、選択と集中を極め熟れた作曲術の顕現ならば、どこまでも張り詰めているtravelingは青く堅い果実のようだ。歌詞の中にも出てくる通り、若さに溢れ、且つその時期に音楽的才能が溢れ返っていなければこんな曲は書けない。天才の女子が、18歳で、最高の集中力を以てして描き上げた楽曲、それがtravelingだ。
昔からよく言われるように、女性が最もその年齢のアドヴァンテージを発揮できるのが17歳、18歳だ。その瑞々しさと青い果実の硬質感、そしてクールなベースラインのオブリガード、と"その時にしか生まれ得なかった"瞬間の数々がリレントレスリィ・ハイ・テンションで詰まりまくっている。こんな曲がLIVEに向かないわけがない。嗚呼、生きてるって強い。やっぱりそう感じさせてくれる生命力に満ち溢れた楽曲である。10歳の誕生日、おめでとう。