あら、ヒカルさんインスタストーリーでも番組の宣伝してるわね。やっぱりこの番組に関われて嬉しかったんだろうな。
少し番組の内容よりは広範な指摘になるが、ひとこと。量子論を扱う話題の時に、送り手側が特に忘れがちなのが、「そもそも古典論自体、親しまれていない。」という事実。古典論という言い方は「量子論以前の物理学」という意味合いで使われる用語で、普通のJRのことを新幹線が出来て以降「在来線」と呼ぶようになったのとまぁ似たようなもん。
が、そもそもその「物理学」を学校で学んだ人が、どれくらい居るのやら。自分の世代の時は生物との選択で、物理を選ぶ人は少なかったな。更にその内容を理解しているとなるとまぁ殆ど居なかったわね。多分、人口の5%もいないよね、例えば「運動方程式書いてみて」って言われてすぐに書ける人とかさ。
年末土曜22時からのNHKスペシャルを観る層となればその割合も多少は上がるだろうけれど、今回は「宇多田ヒカルファンが大挙して押し寄せる」という事態なのでそのバイアスも薄れるか。特に理系ファンの割合が多いアーティストでもないし…これがプログレなら理系がグッと増えるのよね。どうでもいいけどな。
で。量子論の話題で何が面白いのかを強調する場合、「古典論に比べてこんなに違う!」というのが大体の論調になるのよこういう番組って。だけど、そもそもの古典論、謂わゆる「普通の物理学」にどれだけ視聴者が普段慣れ親しんでるかって、そんなでもない。だけど、大抵の場合そこを考慮して番組は構成されていない。もしそこをクリアしてたら素晴らしいんだけど、「驚く為に事前に共有しているべき常識」にズレがありやしないかは心配になるな。
さらにその中でも「とりわけ古典論からは想像もつかない現象」である「量子もつれ」について70分で何かを伝えようというのだから、いやまぁそもそもかなり無謀な挑戦ではある。なので、言ってる内容を理解しようとするよりは、漂う不思議テイストを味わうくらいのスタンスでいた方がいいかもしれない。土曜の夜に日曜の朝メソッドを適用しよう。『なぞなぞは解けないままずっとずっと魅力的だった』とね。
でなくば…嗚呼、「量子力学なるものが簡単にイメージしやすい内容になっていたら嬉しい」というコメントを頂戴してたんだったな。もうこれは「波」ですね。量子は波です。粒子で考える必要はない。弱め合い、強め合い、すり抜け合い、ぶつかり合い、広がって、集まって、生まれては、消えていく。そう、今回の曲としての主役は『何色でもない花』と『Electricity』なのだろうけど、量子の話はまず『夕凪』をイメージするのが宜しいかと存じますわよ。量子もつれにおける、「重なり合ったまま広がって離れていく」というのは、粒子やスピンで考えるより、宇宙の波の話だと思ってくれた方がわかりやすい。宇宙に立ったさざなみがどこまでも広がっていくような。そんなビジュアルで描いてくれたら、テレビ番組としては見栄えがいいですわね。下手に粒子像を持ち出すと視覚的には意味がわからなくなる。粒子像を持ち出すならファインマンの経路積分でだな(以下没)。
こほん。まぁ兎も角、科学の番組だけど今回ばかりは「理解」よりも「情趣」みたいなものを感じながら観るのがいいのかもしれませんわ。それが今回の提言なのでした。
…なんだろう、クリスマス・イヴの朝の話題がこれって。いや気にはしてないけどね。