無意識日記々

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キレのある構成美

『開いたばかりの花が散るのを
 今年も早いねと残念そうに
 見ていたあなたはとてもきれいだった』

3行目の子音、
「MT/T/NTW TTM KR/D/T」
を見ればT(及びD)の音が多く配されているのは瞭然だが、ここでもまた拍の循環移動が見られる。

「みていた」はTが2と4文字目、
「あなたは」はTが3文字目、
「とても―」はTが2と3文字目である。

前回指摘したNTの起承転結構造と同様の拍の順序循環がここにもみられる。「みていた」と「あなたは」はメロディーも類似しているが、こうやって子音をずらす事によってアクセントが移動し、ひとつながりのメロディーとして認識しやすくなる効果がある。

そして、ここでTの音が繰り返されている意味である。最後の「だった」もまたT(及びD)の音で構成されているこの一連のメロディーの中で、一言だけT(及びD)の音が含まれていない単語が現れたらどうなるか。TとDの繰り返しのリズム(それも、循環によって単調さを免れているリズム)の中で、その言葉だけがクローズアップされる効果を齎す。それが、この節では「きれい」なのである。あなたがきれいだった、その鮮烈な印象を聴き手にも与える為に、このT&Dのリピートはトラップとして仕掛けられているのだ。

桜流しにおいては、子音の序列というものが非常にはっきりとしている。

メインとなるのが今繰り返し現れたT(及びD)で、その補佐に回るのが前回触れたNである。このNと近い子音としてMの音がNと似たようなはたらきをする。似た音に似たはたらきを与えるのはヒカルの常套手段だ。

そして、メインのTとDに対抗する二番手としてK、三番手としてRの音がそれぞれある。これも曲全体をみていけばおいおい明らかになっていくだろうが、ここまでの3行をみただけでもその雰囲気は伝わってくる。

『ひらいたばかりのはながちるのを
 ことしもはやいねとざんねんそうに
 みていたあなたはとてもきれいだった』

「ひらいたばかり」の中央にTの"た"があり、その前後に"ら"と"り"のRの音、それにKの"か"が配されている。

「はながちるのを」も中央にTの"ち"があり、Nの"な"と"の"が脇を固めている。"が"のGはKと濁音の関係にある。

「みていたあなたは」ではTの音が3つ、それをMの"み"とNの"な"が脇を固めている。

そして、「とてもきれいだった」では、Tの音に囲まれてKとRで構成された「きれい」が登場する。


ここらへんの構成の妙は、楽曲全体を眺めてみて初めて明らかになる所だから、現時点では「?」となるのが当然かと思われる。おいおい、ここらへんは補完していく事としよう。