指が追いつかなくなってきたのでガラリと話題を変えて。
昨年のオフ会だったか、「好きなアルバムは」と訊かれてSCv2と答えた覚えがある。disc2は勿論、disc1も含めた正直な感想だったが、このアルバムを聴くと、馴染み深い楽曲たちでも本当に色々な見方が出来るものだなと感心させられる。
ぼくはくまは、オリジナルではその後に虹色バスだったからスムーズだったがThis Is Loveが来るとその落差には吃驚させられるとか、Be My Last から誰願叶の流れは、今聴くと、前者が切実な個々人の感情を唄い、後者が大局的な運命観を歌っていて、本来ならリリース順が逆になるのが自然なんじゃないの、それならここでやっとその"自然な"曲順に落ち着いたのかもね、とかそこからのBWPbAMの"エンディング感"の半端でなさ、ただボートラ的に最後に収録しただけの筈なのにEVA破からの先入観と相俟って見事な構成に結果的になってるな、とか種々の感想が込み上げてくる。ただ時系列を遡る曲順にしただけでここまで風景が変わるのか、と。
それなら、と考える。Disc2も含めて逆時系列順にしたらもっとその風景が際立つのじゃないだろうか。つまり、先にDisc2の曲を、そこの曲順も逆にして聴いてみるのだ。即ち、キャンクリ〜愛のアンセム〜グッハピ〜SMLNAD〜嵐の女神〜Prisoner Of Love〜Stay Gold〜という曲順である。
いきなりピアノバラードから、というのも、キャンクリの朗らかなメロディーラインだと気にならない。寧ろ華やいだ幕開けの印象すら受ける。そこから愛のアンセム〜グッハピの流れのよさは聴いてみれば一聴瞭然だろう。そこにShow Me Loveが畳み掛けてくる。その後に聴く嵐の女神はまさに台風一過という趣だ。こうして聴くと嵐の女神のエンディング感も素晴らしいが、その安寧をPrisoner Of Loveが切り裂く緊張感も素晴らしい。SCv2d2〜HEART STATION〜ULTRA BLUEという3部作をBWPbAMが締めくくるという構成。Disc1だけだと「2枚のアルバムからの抜粋」となってやや物足りなさが残るが、こうやって3部作で聴けばあの死ぬほどヒット曲満載のSCv1のボリュームを大きく上回る満腹感をこの作品は与えてくれる。個々の聴き方に大きく依存するものの、宇多田ヒカルの最高傑作は今のところやはりこれだろうなぁ、と私自身は納得せざるを得ない。
そして、この次が桜流しという事実が、このアーティストのとんでもなさを象徴しているんですけどねぇ。いやはや、どこまで行くんだろうかな。