無意識日記々

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鶏が先か卵が先か

おごそかて(笑)。おろそかの間違いやな〜。

件のデモバージョンの仮アレンジは総て河野圭によるものだとか。なるほど、確かに当時のヒカルにこんなに"それっぽい"サウンドが作れるとは思えない。こうして見ると、1stアルバムの時点で彼の貢献度は相当のものであった事がわかる。3rdアルバムまでは彼がサウンド上の最重要人物である事は間違いないだろう。

第一印象で私の耳にとまったのは、各々ベースラインの動き方がオリジナル…というと話の方向が逆になるな、完成版とかなり異なっている。それどころか、完成版より面白みのあるラインを描いているとすら思える。デモにあったアイデアをこうやって"ごっそり削って"いるのは、単純に考えるとヒカルからの提案だったのかなと思えてくる。ULTRA BLUE以降のサウンドと比較してもそう思う。

一方で、基本的なパーカッションによるリズムパターンは変わってないケースもある。Give Me A Reasonなどはほぼそのままだ。同曲は、最初に聴いた時から「リズムがちゃかぽこうるさいなぁ。もっとしっとりと聴かせればよいのに。」と思っていたのだが、これを聴くと寧ろ、先にこのリズムパターンがあってそこからメロディーが生まれてきたのではないかと示唆されているように思う。所謂「リズムとメロディーの分かち難い関係」である。

斯様にデモから見えてくる事は数多い。ムビノンなどは、あのインパクト抜群のサウンドを決定づけたエレキギターと80年代ハウス・ミュージック風鍵盤群の組み合わせがまるで見当たらない。このデモのまま完成形に持っていって果たしてあのインパクトが生まれていたかどうか。Tribal Mixを聴く限り、どんなサウンドでもこのメロディーは強く印象に残った事は間違いないが、切り込み方としては弱い気がする。

改めて、ヒカルはリズムパターン(とコード進行)から曲を作るのだなと思わされた。そこにベースラインが入り込む余地はない。ロック耳からすると、まずギターとベースのリフが生まれてそこにドラムパターンが乗っかってきて、曲に流れが生まれたところでメロディーが乗っかる…みたいな発想なので、随分と違うものだなと痛感させられる。もし98年当時の流行がロックだったとしたら、もしかしたらFirst Loveは全然違ったスタイルになっていたかもしれない。R&Bの、比較的シンプルながらアタックの強いリズムセクションサウンドと当時のヒカルの曲作りの手法は相性がよかったのだ。

これも、鶏が先か卵が先かという話で、当時R&Bが流行っていたから(それは、そういった曲作りに合ったテクノロジーが整ってきていた、というのもあるのだが)ヒカルがそういう曲作りの方法に自然となっていったのか、ヒカルの曲作りがたまたま時代に合致したのか、今んとこはよくわからない。しかし、こうやってデモバージョンを聴く事で、どのアイデアが最初っからあって、どのアイデアが後から付け足されたかがよく見えてくる。読み取るべき事柄はとても多い。もっと聴き込んで&聴き比べてみないとですわね。