無意識日記々

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1st vs 5th 延長戦

"Flavor Of Life"の切り売りやバラ売りで稼いだ数字をどう解釈するかは難しい。特に、当時の着うた文化のムードをどう読み取るかだ。実際、結局"Flavor Of Life"は日本国内に於いても歴代2位に甘んじた事からも、如何に熱狂を作り出すかが肝要だった。「花より男子2」というドラマの威力を見逃してはならないが、主題歌は別にあって、FoLの売上に遠く及ばない事からも、やはり"宇多田ブランドの復活"というのがハマった面は否めない。

一方、ならば「First Love」はどうだったかというと、こちらこそ熱狂を作り出して皆を巻き込んでいった最強の例だ。倉木麻衣が300万枚売った事で、「中身の違いはさして気にならない」という"本音"が明らかになってしまった。700万枚売ったのは、途中からは「あまりにも話題になっているから聴いておかないとマズいかも」な空気が支配的になってきたから買う、というのが実状だったのではないか。

そんな事を言い始めたらキリがない、というのはまさしくその通りだが、キリが無いからといってただ数字を眺めていくだけならAKB48にかなう者はこの世に居ない事になる。極端に過ぎると言われそうだが、どこらへんの「ほどほど」がよいのか、と訊かれて正確に答えるのは恐ろしく難しい。結局、個々のケースを具に見ていくしかない。


HEART STATION」の方で忘れてはならないのが"Prisoner Of Love"の存在である。配信でミリオンにまで行き着いたこの曲、タイトルからしてFoLと姉妹曲で、曲調も宇多田ブランドど真ん中とくれば大ヒットしない訳がないのだが、何度も書いてきた通りあまりメディアの注目を集めなかった為印象が薄いかもしれない。Single Collection Vol.2の曲順を逆時系列にしたのもこの曲をオープニングに持ってきたかったから、という解釈すらさせてしまう名曲の後押しがなくては2000万ユニットは達成されなかっただろう。

かなり違いがあるのだ、1stと5thでは。「First Love」はつまり、"宇多田ヒカル"が社会現象となった象徴として売れた。アルバムがそれ一枚しかないんだから当然皆そこに集中する(後日「Precious」は再発されたが)。その一局集中が生み出した特大ヒットだった。一方「HEART STATION」は、FoLやPoLといった個々の楽曲の頑張りの集大成として2000万ユニットという数字を捻り出した。楽曲主導の、それも一年以上の長きにわたってのヒット作だったといえる。


こうみると、両者を比較する単位である「アルバム」という存在のあやふやさが浮き彫りになってくる。「First Love」は"宇多田ヒカル"という社会現象となった"人"の象徴として売れた。「HEART STATION」はFoLやPoLといった"曲"たちが主導して売上を伸ばした。いずれも、売れた理由は人か曲であって、その間に挟まれた「アルバム」という単位で両者を比較するから難しくなる。裏を返せば、アルバムという単位で人と曲という別々の単位同士を比較する事が出来るようになっている、という解釈も出来る。それに功罪が相半ばするのは、当然といえば当然の事なのかもしれない。