無意識日記々

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メタリカまですら遠いなぁ…(汗)

けものフレンズ」のエピソードは本当に他愛もない。奇を衒うでもなく大どんでん返しがある訳でもなく(まだ完結していないのに言い切っておこう)、ただひたすらにフツーの話を紡いでいるだけだ。物語の原型を忠実に表現出来ているという意味でけもフレのエピソードのつくりは昔話・童話・寓話的である。まとめていうと「絵が動く絵本」みたいな感じだ。けもフレの絵本を描いたらアンパンマン並みにブレイクすると思うのだが、誰かやんないのかな。

或いは、我々の世代なら8ビット時代のロール・プレイング・ゲームを思い出す。ドット絵のキャラクターがトコトコと歩いてひらがなとカタカナで会話しているようなあの世界観。だだっ広い箱庭の中のマップで、ドット絵キャラがひとつひとつのクエストをクリアしながらゲームを進めているような、そんな感覚がある。ある意味、ともだちんちで誰かがRPGを進めているのを隣でぼーっと眺めているような、そういうアニメ作品だ、ともいえる。

最近の若い子からすれば、少しマインクラフトで遊んでいる感じに近いかもしれない。あの、でっかいパノラマの中で何かを作り上げていく楽しさが、受け身なだけの筈のアニメから漂ってくる。その点は、確かに不思議だ。

魔法少女まどか☆マギカ」のような劇的なストーリーもないし、映画並みの作画や音楽がある訳でもない。演技が巧いかというとそうでもないし、キャラクターはそれなりにかわいいが特段人気が集中するような感じもない。どこかが突出して優れている訳ではなく、そこそこちゃんと面白いものを丁寧に丁寧に視聴者に送り届ける事にこだわった作品だ。

もしこの作品に、何か今のように爆発的に話題になるだけの"特別さ"があるのでないと納得できない、というのであれば、そこはちょっとした説明が要る。ポイントは、「作者(誰か知らん)今の時代におけるいち視聴者としての目線をバランスよく持っている」点だ。

昨今人の親を営んでいる方なら、我々の幼少の頃に較べて「昔話・童話・寓話」というものにおける表現の数々が、随分とマイルドになっているのを御存知だろう。いや、我々の世代ですら、既に更に前の世代に較べてマイルドになっていた。だからその反動として「本当はこわいグリム童話」ね類の本がヒットしたのだ。「あれ、そこで食べちゃわないの?」「そこ殺しちゃう場面でしょ?」といったシーンが悉くもっと平和な解決方法に入れ替えられている。今の子たちは、取り敢えずはそういった物語を原型として持っている世代なのだ。

けもフレは、その点において非常に微調整が効いている。このキャラ造形の物語において、どの程度の緊張感とどの程度の緩さが適切なのか、よくよくわかっている…というか、自分が心地よいと思えるバランスに落とし込めるまで妥協しないで製作できている、と言えばいいか。例えばライオンとヘラジカのエピソードなどは抜群に巧かったと思う。やや不穏な導入に、ジャパリパークにも暗雲が立ち込めるのかと思いきや、今まで培ってきた緩さは崩さない。一方で、緩くし過ぎでエピソードに締まりがなくなる、なんて事はなく、絶妙なバランスで落としどころを見いだしている。確かに、何度も書いている通り、エピソード自体は強烈でもなんでもない他愛ないものだが、このファイン・チューニング(微調整な)が成功している為に視聴者は何ともいえない満足感を得る事が出来る。「おいおい、こんな小さなこどもが観るようなアニメでも俺結構楽しめちゃったよ」と思った人は、けもフレ作者が同時代的感覚を持っているから、と考えると大人もこのアニメに嵌る理由がわかりやすい
。勿論こどもでも楽しめる。見事なものだ。


ここらへんが、最近の深夜アニメに欠けていたところだったかもしれない。作画を頑張ったり、二次創作的な面白さを追究したりと、方向性が深夜アニメ・マニア向けになり過ぎていた。「最近のアニメ視聴者は目が肥えているから」と作り込みを頑張りすぎ、昨年は次から次へと制作が間に合わず総集編や再放送をオンエアせざるを得ない作品が相次いだ。早い話が煮詰まっていたのである。

けもフレは、そちらには行かなかった。話はそこそこ面白い程度でもいい。それより、そうして出来たプランやプロットを、如何に視聴者にストレスなく心地よく伝えるか。その点に腐心した。情報をシンプルにし、思えた事はそのまま口にし(これは私がよく言う"モンキー・D・ルフィの鉄則"である)、キャラクターの登場時に生まれた"ふんわりとした期待感"にきっちり応えるエピソードを作る。基本中の基本の筈だが、これを実現するのは難しい。それが出来たからけもフレは大ヒット中、といえる。

とはいえ、では「わかりやすく作ろう」という態度が前面に出るといけない。ハナにつく。人間、噛んで含まれ過ぎると小馬鹿にされたように感じて腹が立つものだ。あクマで、丁寧に作り上げた結果としてのわかりやすさでないといけない。ここらへんが難しい。


そのバランスを、最近音楽で達成しているなと私が思えるのがメタリカで…という話からまた次回。