無意識日記々

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道化師のあはれ

青い非常口、Blue Emergency Exit、か。歌詞になりそうだな。寧ろ今まで歌詞に非常口が出てきてないのが不思議な位? あったような気がするほどしっくりハマっている。

経年劣化はセピア色と相場は決まっているものだが褪せて青色とは風流な所に目をつけたものだ。ヒカルにとって青とはかつて恐怖の象徴だった青空の色。その色が「こちらに来れば安心ですよ」と口を開けて待ち構えているとくれば些か不気味な趣も立ち上がるか。奇しくもでも何でもないが今日は『COLORS』DVD発売記念日。光の色について考えてみるのも悪くないかもしれない。

『青い空が見えぬなら青い傘広げて』の歌詞は、しかし、もし仮に後の「青空の青は恐怖と嘲笑の象徴」なる発言を真に受ければ自らの手で恐怖を招き入れたいという意味にもとれる。勿論この歌詞を書いた時の青空は『time will tell』で歌われた『雨だって雲の上へ飛び出せば Always blue sky』の『blue sky』であり、"晴れやかな気持ち"や"希望"を示唆する象徴でもあるのだが、この時は『青空へ Take off !』とあるように、その為には空を飛ぶ力が無ければならなかった。随分思い切る。それが『COLORS』の時は傘さえ差せれば何とかなる、というレベルにまで落ち着いた。「雨を避け青空を仰ぐにはどうすればよいか」という問いに「雲の上まで飛べばいいじゃん」と言い放った15歳のヒカルと「青空を描いた傘を差せばいい」と答えたヒカル。これは素直に「大人になった」と言っていい、のかな。

そこから更に十数年を経て今度は『大空で抱きしめて』にて『空の見える場所へ』行きたいと『雲の中 飛んでいけたら』と夢想する。基本的には『time will tell』と変わらないが、それが夢であると明言しているのが異なる。更に『僕はまだあの頃のまま青空で待ち惚け』とくる。『time will tell』や『COLORS』では青空にまみえればそれでハッピーエンドだったのが、実はここで「せっかく青空に辿り着いたのに、肝心の、本当の本当に目的だった太陽にはまだ会えていなかった」事が判明する。それどころか、太陽は夜空の中で遠く遠くの天翔る星になってしまっていた―

これがヒカルにまつわる「青い空」の物語だが、ならば青が本当に持っていた恐怖と嘲笑とは、会えない怖さと、無駄な努力に対する嘲りだった事になる。これは悲恋だったのか。恐らくこれからもまだまだヒカルは青空について歌ってくれるだろう。