無意識日記々

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Age ain't nothing but... 2012

今年で70歳になるという元ザ・ビートルズポール・マッカートニーだが今でも現役のミュージシャンとしてニューアルバムを出している。今回はジャズ・スタンダードのカバー集なのだが、いちばん耳を引くのがその中に挟みこまれた彼自身のペンによる新曲2曲だというのが驚異的だ。特に"My Valentine"は「本当にこれが作りたてホヤホヤの2012年にリリースされる新曲なのか!?」と疑わざるを得ない程スタンダード然とした名曲である。もし言われなければ、こういう名曲が昔あったのか、へえ、と感心して納得してしまっていただろう。しかし、よくよく聴いてみれば、アレンジはジャズらしいしっとりとしたものでも、メロディーの組み立て方はまさにザ・ビートルズポール・マッカートニーのそれである。齢70にして己の個性を失わず、瑞々しい名曲を生み出してくるその才能と姿勢には恐れ入る。

前回、ヒカルがソングライターとしてポール・マッカートニーの域に達しつつあると書いたが、勿論それは私の本音ではあるのだが、実際の実績という点では遠く及ばない。ポールはビートルズで10年過ごしたあともWINGS等ソロ活動で結果を残してきた。常に現役のミュージシャンとして活躍してきたのだ。彼が生きる伝説として最前線に立ち続けていたからビートルズも伝説化していけた。似たような例としてはスティングのソロでの活躍からPOLICEの再評価への流れなどがあるだろうか。ポールが20世紀後半の大衆音楽を牽引してきたといっても過言ではないだろう。凄い。

何が心強いって、人間、70間際になっても衰えずに名曲が生み出せる事だ。まぁ今回の場合はもしかしたら昔書いた曲を引っ張り出してきたのかもしれないが、次はロックアルバムで来るというし、創作意欲は衰えていないだろう。

今ヒカルは29歳で、82年度生まれだから日本式にいえばポールとはちょうど40歳離れている。単純に計算してしまえば、光さえその気ならヒカルはまだまだあと40年、現役で活動してくれるかもしれない、という事だ。それも懐メロ歌手としてではなく、常に新曲を世に問える立場として、だ。歌い手としては流石に加齢から来る体力の衰えに抗うのは難しいだろうが、作り手としての才能は、果たして年齢に関係あるかどうか、これは誰にもわからない。ひとによっては若いうちに枯渇する場合もあるだろうし、ひとによってはある程度年齢を経てから開花することもあるだろう。スポーツ選手などと違い、ソングライティングの能力というのは年齢との相関がはっきりしない。今までの様々な例から推し量るしかないのである。

そういう時に20世紀最高のソングライターが21世紀を10年以上経過しても元気に曲を生み出しているという実例があるというのは精神衛生上非常によい。もしヒカルのソングライティングがあと10年しかもたないというのなら5年はおろか2年だってアーティスト活動を中断するのは痛いが、これが40年となるとかなり気分が変わってくるからだ。それ位なら、待てる。マッカートニー卿には大変な勇気を貰った。感謝したい。ありがとう、ポール。