無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

よく見ると右下に黒蛇が居ます。

「音楽自体が終わったコンテンツだ」とか書いた文章をついつい最後まで読んでしまい貴重な人生の3分間を無駄に費やしてしまった。そんな時間があったらキャンクリ聴いてニヤニヤしてりゃよかった。もうそんなこと季節。ちょっと後悔。

多分、音楽をコンテンツとして見てる人はLIVEフェスティバルなんか行った事がないんだろう。洋邦問わず、あれだけの人間が何万円も払って決して待遇がいいとはいえない状況の中で音楽を楽しんでいるのをみれば、とても終わったなんていえない。ラジオだろうがCDだろうがダウンロードだろうが、LIVEへの吸引媒体としての音楽ソフトは、商業的価値はどうであれ生き残る。第一、"音楽"という営み自体、少なくとも3万年以上の歴史があるのだ。楽器の化石が発見されている。更に言えば歌の歴史となると言語の歴史より古いかもしれない。数百万年前から人は歌っていた可能性がある。娼婦より語り部より古い、最古の職業は歌手かもしれない。そんな営みが終わるとか有り得ない。まぁ、"商業的マテリアルソフトコンテンツ"(物心どっちなんだそれ)としては終わるかもしれない。

という訳でCDで宣伝してLIVEで稼ごうという意識が定着しつつある。チケット代にアーティストグッズに。何かと非難の多いAKB48だが、あのユニットのそもそものコンセプトは「行けば会えるアイドル」だったのだ。披露するのが歌唱力ではなく握力になったりしていて音楽関係なくなっているが「ナマ・LIVEで稼ぐ」という広義の意味に於いては同類である。今はそういう時代である。

しかし、ではミュージシャンたちはそこらへんどう考えているか。小学生のヒカルが眠る前に聴いていたというブラックアルバム(余談だが、この曲の冒頭を飾る名曲Enter Sandmanの中間部には少女が"眠る時のおまじない"を語るパートがある。寝る前に聴くのは結構理にかなっている)を成したMetallicaは20世紀末にナップスター相手に訴訟を起こすなど早い段階から音楽の販売形態に危機感を持っていたバンドだが、彼らは2003年のインタビューで「これからはCDが売れなくなっていってLIVEで稼ぐ時代が来るのでしょうか」という質問に対して、こう答えている。「いや、LIVEでは儲からない。」

彼らの場合予算ギリギリまでステージセットに凝ったりする性癖がある為そういった発言をしたのだと思われるが、早いうちから危機感をもっていた彼らはもうこの時既にCDが売れないからとLIVEに軸足を移す傾向に対して警鐘を鳴らしていたともいえる。For whom the bell tolls ?

彼らはこの時点で更に次の手を打っていた。当欄でも二度ほど紹介したLivemetallica.comである。終わったばかりのLIVEの音源を数日のうちにダウンロード販売してしまう。そのスピード感。彼らは本当に世界中を旅して回るので(21年前にブラックアルバムの"ジンバブエ盤"がリリースされた話は今でも語り草だ)、それぞれのファンの地元に来るまでのタイムラグは年単位だ。待ちきれないファンは密航ができなければこのLivemetallica.comで最新LIVE音源を手にする事が出来る。見事なファンサービスであるが、LIVEと配信をすぐさま結び付けてしまったその鮮やかな手腕。カカロットベジータフュージョンした時のような…いやそれは違うな。とにかく、この"次の一手"を打ったのが今から8年前の事だ。かたや日本では今日やっとSONYiTunes Storeに参加。なんだろうこの差は。

まぁMetallicaの場合それ以前から布石があった。テーパーセクションといって、観客席の中に録音撮影可能なエリアを設け、好きなだけLIVE録音の海賊盤を作ればいいと推奨していたのだ。勿論純粋なファンサービスだったのだろうが(何しろここのドラマーからして重度の海賊盤収集家)、それが積極的なプロモーションに繋がる事も見越しての事だったのだろう。何でも禁止にするのではなく、その時々のファンのニーズに敏感に反応してそれまででは考えつかなかったようなサービスを提供していく。90年代のUSAでのCD売上がThe Beatles, マライア・キャリー、ガース・ブルックスに次ぐ第4位という化け物バンドだから出来るという側面も多大にあるが、それにしてもしがらみを振り切って先手を打ち続け生き残ってきたバイタリティは素晴らしい。

という訳で、時代の最先端とか別に力む必要はないのである。ただ単にファンのニーズにしっかりこたえる事だけを心掛けていれば自然とそれが新しい。そこを見失ってCCCDとかやっちゃうからややこしい事になるだけだ。焦って遅れるのではない。余計な事はせず普通にあるけばよいのである。

ヒカルが常に新しいサービスを開拓してきたのも、同じ事だ。別に時代の最先端を行こうとしていたのではなく、ファンとして便利だろうから、とそれだけの話なのである。我々も、新しいガジェットがどうのと肩に力を入れる前に、自分が何を欲しいのかをシンプルに感じとっておく事が大切なんだと思われる。