無意識日記々

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喉と感性

熊淡5は、端的にいえば、今までの5つのEpisodeの中でも「Hikaruがいちばん素直に自分の好みを吐露した回」だったと言えると思う。それは、多分にその時の"気分"に依拠した偏りがあったであろうとはいえ。

特に、昔からフェイバリットとして挙げてきていたアーティスト、StingNine Inch Nailsの2つについて、代表曲でも何でもない(ってのが今回のテーマだったのだからそれでいいんだけど)"I Burn For You (live)"と"Frail"を選んできたのは、「やっぱそこらへんだよね」と妙に納得してしまった。変な話だが、Hikaruの創ったオリジナル・アルバムたちより、この熊淡5の方がHikaruの好みをわかりやすく伝えてくれているように思う。仕事でやっているという意識が強いせいか、自分の制作の際にはプロフェッショナルに徹しすぎるのだ。それより、こうやってリラックスして他人の書いた曲を選んでいる方が、肩の力が抜けていて素直なように思える。いや私の思い込みに過ぎないのかもしれないけれどね。

そう思う中で、最後に"テイク5"を持ってきた意味を考える。今振り返ると、"Episode 5なんだからテイク5だよな〜"だなんて余計な悔しさが込み上げてきたりするが、この並びで選ばれた曲がこれ、っていうのはどういう事か。これは、Hikaruの好みの曲なのだ。自分で書いたのだから自分好みに決まっているだろうと思いがちだがさにあらず。例えば私が大好きな"Can't Wait 'til Christmas"を、Hikaruは多分プライベートで聴いたりはしないだろう。まさにこういう曲こそ"プロフェッショナル"というヤツで、リスナーに聴いてもらう為に書かれた楽曲であるのだから。Hikaruはこういう曲も書けるし、こういう曲はファンが喜ぶから歌うのだが、ではHikaruの"好み"かといえば違う気がする。そういう話。


しかし…ここで私の独り言に拍車が掛かる。Hikaruの好みの曲調って、Hikaruの歌い方と合ってない。テイク5は随分うまく歌っているが、声質が合っているかというとそうでもない。それは、Passionでも同様だった。Hikaruの声質がバッチリマッチングする楽曲といえばそれは例えばPrisoner Of LoveでありドラマでありWonder 'Boutである。演歌にすら片足突っ込みそうなソウルフルな歌唱が彼女の真骨頂であり、星空のどこまでも染み渡るような歌唱を要求されるテイク5には必ずしも合ってはいない。私はそう捉えている。

そこをどう考えるかで、いつも悩む。その"ギャップ"を、Hikaruはどう考えているのだろう。彼女の声は、彼女の好みと必ずしも一致しない。そして、その歌声は、誰がどう聴いても「母親譲り」なのだ。演歌歌手藤圭子から、遺伝子的にも受け継いだその"喉"とHikaruの好みという"感性"。この、深く重くそして広いテーマについて、今一度考えてみようかな。次回に続くかどうかは、毎度ながらわからないが。