無意識日記々

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それでも言葉にならない気持ち

今朝になって気が変わったので別の話を。(笑)

Demo Versionというと歌詞やメロディーが完成品とどう違うか、という点に注目が集まるものだが、ヒカルの場合「コーラス・ワークの鬼」と呼ばれる三宅プロデューサーが居る為、バックコーラスの当て方にも随分変化が見て取れる。その代表例が『言葉にならない気持ち』である。

そもそも、セカンド・アルバムの楽曲のデモが今回の企画に紛れ込んでいるのが特異だ。御承知の通り、Interludeで先に御披露目されていたせいだが、やはりこうやってワンコーラス収録されてしまうとある意味"場違い感"は否めない。ただそれは聴き手としての理屈であって、制作サイドからすればこの時期のDemoなんだから一緒に収録するのが筋なのだろう。という事は、既に1stアルバム制作時点でこの曲は大体大枠が出来ていた、という事になる。どういう経緯でセカンドアルバムに収録される事になったのか事実関係を整理したい所だがちと資料が足りないな。

話を戻そう。Interludeだけならよいが、セカンドアルバムのフルコーラスの『言葉にならない気持ち』を知っている身からすると、このデモ・ヴァージョンには違和感を拭い得ない。そのいちばんの要因は、バックコーラスの重ね方が異なる点にある。スタジオバージョンの『言葉にならない気持ち』の場合、サビの『言葉にならない気持ち いつか伝えたい』のうち、『言葉にならない気持ち』の部分にハーモニーが入り、『いつか伝えたい』の部分がバックコーラス無しのリード・ヴォーカルオンリーの歌唱になっているのだが、このデモヴァージョンの場合、『言葉にならない気持ち』の部分がシングルのリードヴォーカルで『いつか伝えたい』の部分の方にバックコーラスが入っている。しかもこちらはハーモニーよりユニゾンが主体である。このアレンジの違いによる印象の差は大きい。

ハーモニーと言った場合はメインのメロディーの上や下のラインをなぞる事、ユニゾンは同じメロディーを(時にはオクターブ違いで)歌う事だが、このユニゾンにもちょっと幾つか種類がある。ちょうどこの『言葉にならない気持ち』の中でもその使い分けが為されている。

ニゾンをスタジオ・レコーディングする時(ミックスダウンする時)に重要なのは定位を何処にするかを決めなければならない。左右に大きく散らしたり、中央に寄せたり。或いは声部によってかけるエコーの深さを変えたりして距離感を演出したり。そんな中で全く同じ定位で自分の声でユニゾンを録音する事を慣例として「ダブル」と呼ぶ。この『言葉にならない気持ち』でもダブルになったヴォーカルを聴く事が出来るし、またユニゾンを左右に散らしたパートもある。それぞれでどう感じが変わっているのか、注意して聴き比べてみるのもよいだろう。

このコーラス・アレンジの違いは、もしかしたらアルバムの中での位置付け、曲順の変化が理由なのかもしれない。が、今回収録されたDemo Versionはワンコーラスだけなので(とは言うものの、最初っからワンコーラスしか出来てないデモなのかもしれないが)、詳細を推理するのは避けたい。いずれにせよ、発表のタイミングや場所によって、曲のサウンドが変遷を辿る事もあるんだな、と思わせるヴァージョンである。なかなかに興味深かったわ。