無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

前回タイトルだけ先走りましたの巻

結局の所、「タイトル・トラックが無い」、これに尽きると思う。曲はいいのにアルバムとして幻なのは。

『First Love』には『First Love』が、『Distance』には『DISTANCE』が、『DEEP RIVER』には『Deep River』が、『EXODUS』には『Exodus '04』が、『ULTRA BLUE』には『BLUE 』が、『HEART STATION』には『HEART STATION』が、『This Is The One』には『The One (Crying Like A Child)』が、それぞれあった。『Fantome』には『Fantome』も『FANTOME』も『ファントーム』も、『Super Fantome』も『Fantome Hour』も『Kumantome』もない。

強いて挙げるなら、フランス語の出てくる『俺の彼女』が近いかもしれないが、歌詞カードを見る限り『Fantome』やそれに似た単語は歌詞に出てこない。や、もしアルバム・タイトルが『俺の彼女』だったらインパクトは抜群だったろうがな。

この『俺の彼女』の素晴らしさ、もう最初のイントロから心を鷲掴みにされてしまった…という話は後に回そう。今は、まだいい。恐らくこれから私は、いつものように各曲について「この曲のここが凄い」という話を、全曲延々続けるだろう。恐らく、『HEART STATION』アルバムあたりと似たようなテンションで。それを読んだら、「一体、何が気に入らなかったんだ!?』と読者は思うに相違ない。だからこそ、今のうちに言っておきたいのだ、このアルバムに物足りなさを感じているという事実があったのを。

タイトルトラックがない、というのは、アルバム全体にわたって「これだ」と言い切れるテーマを持った曲が存在しない事を意味する。自然に考えれば、アルバムタイトル候補は『桜流し』と『道』に絞られる。最初に歌詞を書いた曲と、最後の方に『言いたい事が言えた』曲と。しかし、このどちらかに決めるには『俺の彼女』や『真夏の通り雨』の求心力が強すぎる。後ろには『荒野の狼』も控えているし…という風にどの曲も存在感がありすぎていつまで経っても決まらない。『HEART STATION』も似たような状況だった気がするが、この時は恐らく、「じゃあ中心(Heart)になるような中庸な曲をタイトルにしよう」となったのだと推測している。突き詰めていえば、「この17ヶ月間の宇多田ヒカルは結局何だったのか」をシンプルに表現された曲がタイトル曲になる、とそう私は解釈している。

同じような「中心となる曲」を『Fantome』に探しても、さて、何とも定まらない。やはり『桜流し』が最後を陣取るのだから…と言って『桜流し』をアルバムタイトルにしても、他の10曲を"代表する"感じがしない。少し色に偏りがありすぎる。『道』は逆に、イメージが定まらな過ぎる。何を言っているのか(タイトルだけでは)わからない。終始、こんな感じなのである。

つまり、『道』を『道』という名にしてしまったのが原因な気がする。せめて副題をつけて『道 - you are every song -』とでもしておけば、アルバムタイトルを『道 - you are every songs -』に出来たのに。Flowers For Algernon のsだな。

まぁ、言っていても仕方がない。このアルバムは『Fantome』、『幻』、『気配』なのだ。その幻影を、どこまでも追い掛けていってみましょうぞ。