無意識日記々

mirroring of unconsciousnessdiary

ついでに浮点々君の音についても


せっかくなのでメインだったFloating Pointsのパフォーマンスにも少し触れておくか。


スタジオ盤で聴ける緻密な構築性がライブの場だとどうなるのか興味津々だったが…のだけど、ここはオーディエンスの反応を記す事で代えたいと思う。


まず、いちばん多かったのが「キック(バスドラ)が入ると歓声が上がる」勢の皆さん。エレクトロ・ダンス・ミュージックの大家だもんね。そりゃシンプルに踊りに来ますわよね。


つぎに耳を引いた?目を引いたのが、曲展開を熟知している皆さん。楽曲の勘所で些かフライング気味に声を出してくれるので、「お?次で何かあるのかな?」と身構えることができたわ。Floating Pointsのマニアってぇのも多いのねぇ。


あと1人か2人?居たのが、全く楽曲の勘所とは関係ない所で奇声を発する方。目立ちたかったんだろうかねぇ。こういうのもライブの風物詩。いいよいいよ。最初は「ライブ・バージョンとスタジオ・バージョンで構成が違ってて、それで声を上げる所がズレているのかな?」とか推測したのだけど、なんのことはない、誰も声をあげない所ならよく目立てるってことだったのね。たぶん。きっと。でないとあの無秩序さは説明がつかない(笑)。



事程左様に、Floating Pointsのオーディエンスは多様だった。音楽マニアから踊りに来た人、奇人変人まで、いろんな人が居たなぁ。あと宇多田さん待ちの我々ね。うん、勿論単独公演とフェスティバルでは客層が異なるのだろうけど、前方に居たのは直前までメインステージでやってた電気グルーヴを蹴った人たちだったのだから。洋楽ファンがメインだったとは思うけど、いやはや面白かったな。


それだけのいろんなオーディエンスにウケるほど、Floating Pointsのサウンドは間口が広かった。基本、メロディらしきものはなく、リズムセクションと装飾の電子音だけなのだけど、そのシンプルなストラクチャーってまるでリズムに合わせて万華鏡を回していくかのようで、とても心地よかった。インターバルを45分取っただけあって─と書こうとしたけど殆どの時間ひたすらセッティングでサウンドチェックしてなかったから関係ないのかな─、抜群に音が良かった。今まで幕張の展示ホールで観たライブの中でも屈指の音の良さだったね。あれだけボトムをラウドかつソリッドに鳴らしながら線の細い電子音のアンサンブルがクリアに聞こえたのだからよっぽどだよ。ダンス・ミュージックのフロアに何が必要なのかよくわかってらっしゃるわMr.サム・シェパードは。


そして、サウンドがリズミカルな万華鏡と書いたけど、それに近いヴィジュアル・イメージをスクリーンに“即興で作り上げて”投影していってた隣に立つ中山晃子! 「アライブ・ペインティング」って言うんだってね初めて観たわよ。宇多田ヒカルでいえば『忘却』MVみたいな細胞分裂的映像を、リアルタイムで間断なく次々と創造するって想像を絶するな。最後にはそれに絡めて「たった今の観客をスクリーンに映し出す」ことでライブ感の“種明かし”的なオチを作ってたな。あれ、庵野秀明が「本当はやりたかったこと」だよね。映画館でその時の客席の様子を銀幕に映し出す、ってヤツ。やっちゃいましたね。エヴァ的な感動まで作っちゃったわ。


更にビビったのはライティング。これも即興に合わせて変化してるようにみえた。それくらいあらゆる音にシンクロしていてこちらの音への没入感が加速されたわ。


この、緻密で構築的なサムのサウンド、ヴァイタルでスポンテニアスな中山晃子の映像、そして何の遠慮もない抜群のライティングの三位一体が作り上げるダンスフロアはそりゃハイクォリティでしたよ。テンポを一切落とす事なくきっちり1時間ダンス・ミュージックを貫き続けました。繰り返しになるけど、頭でっかちの音楽マニアからただ騒ぎたいだけのフェス坊主たちまで、楽しめた人のスペクトルは非常に広かったんじゃないかな。



このステージのコンセプトを予めわかっていたなら、宇多田ヒカルが歌うのはそりゃ『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』になるに決まってましたな。『気分じゃないの(Not In The Mood』を期待したこちらは見事に梯子を外されたのだけど、今回のFloating Pointsのワンポイント・ゲストとしては至極正当でした。歌はヒカルだけだったしな。


ただ、それでもやっぱりヒカルの歌メロが載ると印象が目立つな! もちろんヴォーカルものであるというアドバンテージはあるだろうけど、それにしたってキャッチーだった。そして、上手から歩いてきたヒカルにステージでの華が凄くあった。キラキラ輝いて見えたのはこちらの欲目だけではないだろう。あんなに可愛いスーパースターは反則だ。



こんなハイクォリティなステージをFloating Pointsが構築できるなら、彼にヒカルのダンス・トラックを軒並みリミックスして貰ってスペシャル・ライブをやるのもいいかもしれないねぇ。今回やらなかった『BADモード』を筆頭に、『One Might Magic』やら『Celebrate 』やら…嗚呼、来年そのコンセプトでサマーソニック2026のヘッドライナーやりますかっ? もしツアーの途中とかなら、少し違ったものを見せるのも面白いかもしれないしね。リハーサルが大変だけどね…。


…と、まぁそんな妄想はさておき、Instagramの様子からもわかる通りここまでの秀才ときっちり「ただのお友達」になったヒカルさん。まだまだ今後も2人のコラボレーションは続いていくことでしょう。この知的なダンス・ミュージックはヒカルの音に合う事請け合いだからね!



(…となると今後も、Floating Pointsが来日する度に「ゲストにヒカルさん来ないかな?」って訝る羽目になりそうですな?…それはなんだかせわしないなっ!(笑))