無意識日記々

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カップリング

シングルCDの"カップリング曲"というのは奇妙な存在だ。なぜ"シングル"なのにおまけでもう一曲入っているのか。理由は恐らくとても単純で、アナログ時代の名残なのだろう。

アナログレコードというのは円盤の片面に刻まれた溝を針で読み取る仕組みだから、円盤の両面に音楽を記録する事ができる。一曲だけ収録したシングル・レコードを作ると、必然的に裏面が空いてしまう。そこを埋める為に収録されたのが所謂"B面曲"である。再生メディアの特性を活かした本来の意味での"おまけ"だった訳だ。(これって一応通説になってるけど実際の経緯を記した文献とかは知らない。まぁこんな所だろうけどさ。)

しかし、CDに時代が移って音楽は片面のみ収録されているのが普通となった。ならばもう"B面曲"なんて入れずに一曲だけで…とはならずに、「今までシングル盤っていや2曲収録だったんだからCDになっても2曲だろ」というノリで結局"カップリング曲"という括りでシングルCDではメインの楽曲の他にもう一曲収録する事になったのだ。

こういった経緯だった(と思われる)為、流石にCDからネット配信に時代が移ると"B面曲"、"カップリング曲"という概念はなくなり、楽曲は単独で購入されるようになった。(それどころか"着うた"としてひとつの楽曲が解体されてバラ売りされるようにまでなった)

ネット配信において、特に携帯電話で楽曲をフルで購入できるようになったのは大きい。特にシングル購入層は大幅にこちらに流れた。この流れを作り出すのに一役買ったのがau音楽配信システム「LiSMO」であった。Keep Tryin'はその口火を切る為にLiSMO開始とほぼ同時に無料配信され200万ダウンロードを記録する。キプトラは、時代を象徴する楽曲として人々の記憶に残った。

その脇で、Keep Tryin'のシングルCDもひっそりと発売された。初動数万枚という規模は宇多田ヒカルというネームバリューからすれば余りにも地味なものだった。もう殆ど時代の境目に埋もれるようなカタチで発売されたこのシングルCDには(とはいえこの一年後にFoLはそれでも数十万枚を売り上げるのだが)、今の所宇多田ヒカルの歴史において「最後の"純粋な"カップリング曲」となっている名曲がWINGSである。

Keep Tryin'のカップリング曲が何故、どうしてWINGSだったのか。次回はその話をしようかな。…いやまたキプトラに戻りそうな気配もありますが。気分で。