無意識日記々

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カップルにする理由。

WINGSがKeep Tryin"のカップリング曲として収録されていた理由を考えてみる。

いちばんあっさりと解釈するならば、Keep Tryin'が携帯で無料配信されてしまった為、シングルCDを購入させる動機が他に必要だった、といったところだろうか。既にアルバム制作は終盤に入りつつある時期(アルバムは6月発売でシングルは2月発売だ)で、完パケの楽器も提供できる状態にあったのだろう、その中から何か曲を見繕うのは容易いことだ。恐らくたぶん、それが真実なのだと思う。

したがって、ここから先は益体のない妄想である事を先に断っておきたい。

Keep Tryin'の歌詞のテーマを一言で要約すればそれは「頑張れ」であろうか。歌詞を紐解いてみても、『ここからがんばろうよ』『退治したいよ』『泥に飛び込んで』と、なんだか威勢がよく勇ましいことばが並んでいる。

しかしそんな中で1行、毛色の違う歌詞が紛れ込んでいる事に注意したい。そう、『大切な命 とっても気にしぃなあなたは少し休みなさい』の一節である。

『弱気めな素顔映す鏡退治したいよ』とまでいうから強気々々で攻め込んでいくかと思いきや「休め」である。これには意表を突かれた。光にとって応援歌とは、ただひたすら焚き付けるだけでなく勇気を持って休む事も大切だと言わせなければならなかったのだ。既存の応援歌に対するパロディやアンチテーゼといった側面をもつこの楽曲ならではの風刺といった所か。

ここから人間活動に至るまでまる5年かかっている訳だが、だからといって光が全く"休み方"を知らなかった訳ではないだろう。苦手ではあっただろうが。そんな"休み"を表現したうちのひとつが、WINGSなのではないだろうか。

『お風呂の温度はぬるめ
 あまえ方だって中途半端 それこそ甘えかな
 安心できる暖かい場所で
 大好きな作家の本を開いて』

『明日に備え 出来る事もあるけど
 早めに寝るよ、今日は』

こういった一連の文章は、光のリラックス法、休み方の処方箋を書き下したもののようにみえる。『あまえ方だって 中途半端 それこそ甘えかな』の一節には「あれは悩んでるんやない、悩み方知らんから困ってるんや、ほら、どことなくぎこちないやろ?」(花井拳骨による竹本テツ評)に通じる苦笑い感が漂うが、どうやったら休めるかを考え疲れて眠ってしまうような光からすれば切実な問題で、やはり言い聞かせなくては自らを休ますことすらあたわなかったのだ。いわば、そこらへんのよくわからない領域を正直に吐露したのがWINGSという訳だ。この曲で、光は己の弱さを、慎み深く、しかし隠すことなく表している。『私は弱い だけどそれは恥ずかしいことじゃない』とSMLで歌うのはここから更に3,4年後の事になるが、ならばこの頃のヒカルは己の弱さを恥ずかしがりながら正直に歌った、とも言い換えられる。そっちの方が萌えるっちゃ萌えるが。

兎も角、そういった歌詞世界の対比を目論んでWINGSをキプトラのカップリングにしたのではないかという話でした。まる。