無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

The 5 Senses in Flavor Of Life

英語で"flavor"といえば、味の事を指すような、香りの事を指すような、どちらの感じもある。いわばflavorとは味と香りの中間地点。人間の五感とは面白いもので、視覚聴覚嗅覚味覚触覚が絡み合いながら独特の感覚を形成していく。

今回は"五感"という観点から"Flavor Of Life"の歌詞をみていこう。

出だしはサビからだ。『ありがとうと君に言われると』。相手から言葉を言われる、即ちココでは聴覚がはたらいている。歌い出しはまず耳から入るのがこの歌だ。

そしてサビ終わりであの印象的なフレーズ、『淡くほろ苦い』がでてくる。苦いんだから味の話、即ち味覚である。『なんだか切ない』という感情が、耳から受け取った情報を味覚のクオリアに変化させるのだ。こうやって五感のうちの複数の感覚で挟み込むことで"切ない"という感情を表現として捉えるのがこの歌の主軸となる。

Aメロの歌詞もなかなかに面白い。『収穫の日を夢見てる青いフルーツ』。見てるとか青いとかいうのは視覚情報なのだが、最後にフルーツが来る事で聴き手の感覚は味覚の想像へと推移させられる。視覚から味覚へ、という流れが1番のAメロの歌詞だ。

一方2番のAメロの歌詞は一転、『甘いだけの誘い文句 味っ気のないトーク』とくる。甘いは味覚、誘い文句は耳から入るので聴覚、味っ気は文字通り味覚、そしてトークは耳から入るので聴覚だ。つまりここでは、聴覚から入る情報を味覚で形容するフレーズが立て続けに2つ並んでいるのである。これは、サビで「ありがとう」という言葉を捉えた聴覚が切なさを橋渡しにして「淡くほろ苦い」味覚の感覚を惹起したのと呼応した表現になっている。こちらは味がしなかった、という否定的な意味になっていて対比も実に鮮やか。非常に巧みな歌詞の構成である。

しかし、この歌の白眉はやはり『忘れかけていた人の香りを突然思い出す頃 降り積もる雪の白さをもっと 素直に喜びたいよ ダイヤモンドよりもやわらかくてあたたかな未来 手にしたいよ』の一節だ。

ここでは『人の香り』、即ち嗅覚が頭に来ている。次は『降り積もる雪の白さ』。「白さ」というからには色だから視覚的な情報だ。そして次である。『ダイヤモンドよりもやわらかくてあたたかな』という言い回し。やわらかさとあたたかさは触覚である。しかも前者は硬度の、後者は温度のそれぞれ感覚だ。ここが"触覚"で彩られているから次が『手にしたいよ』なのである。"未来"というあやふやで不確かなものを、触覚的表現を駆使する事で確かなものにしたいという願いの強さがよく伝わってくるこの歌のハイライトだ。

こうしてみると、Flavor Of Lifeという歌は、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の五感の総ての感覚を網羅して、捉えどころのない、切なさや未来といった感情や概念を情感たっぷりに描いている事がわかる。この実に味わい深い歌詞を、歌詞カードを手にとって歌詞をじっくり読みながら、この歌を聴いてみてくださいな。


…ありゃ、匂いが抜けてるな。やっぱり歌詞のようには、いかないや。