『あなた』は部屋の外が凄い。『燃え盛る業火の谷間』やら『人寄せぬ荒野』やらに囲まれて戦争が始まっていたりアクティヴィストが闊歩していたりする。端的に言って地獄だろう。タイアップ先の「鎌倉ものがたり」に合わせている面も多分にあるとはいえ、ここまで世界を過酷に描いた歌も珍しい。
だからこそ『部屋』の威力が際立つ。この部屋を取り囲んでいるのが「音」だというのは注目に値するだろう。
『戦争の始まりを知らせる放送も
アクティヴィストの足音も届かない
この部屋にいたい もう少し』
足音は言わずもがな、放送の方も音が必須だ。この『放送』という歌詞を聴いて思い描いたのがテレビなのかラジオなのか町内放送なのかネットストリーミングなのか他の何かかは人によるだろうが、それが音であったのは皆共通しているのではないか。
『あなた』という歌は五感を激しく行き来するのが特徴だ。
『私の手を握り返したあなた』
『oh 肌の匂いが変わってしまうよ』
『晴れ渡る夜空の光が震えるほど眩しいのはあなた』
それぞれ触覚・嗅覚・視覚。流石に味覚は織り込めなかったようだが『終わりのない苦しみを甘受し』という言い回しに未練が見れる。味の「甘い」じゃないけどな。それはさておき。
その中で『部屋』は上記の通り聴覚を遮断するものとして登場する。様々な“外の世界の雑音”から隔絶する為のツールとして。そしてヒカルはそこに『いたい』と歌う。勿論、『もう少し』だけだけども。
ここで更に注目したいのは…嗚呼、最近時間の使い方が下手だな。続きはまた次回ね。