無意識日記々

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沢木耕太郎著「流星ひとつ」

「流星ひとつ」を読んだのだが…何の感想を書けば楽しくなるやら、絶賛お悩み中。

書いてある内容自体は、訴えられる類のものではないので、照實さんの言ってる出版物はこれではないのかな、と思う反面、仮に「絶対に許せない」というのが、ヒカルの事を慮っての事なら「あーそうなるかー」と納得してしまう。もし私が昨年10月頃にこれ読んでたら「ふざけやがって」くらい言ってたかもしれないなー。読む時期をずらして正解だったかも。比較的冷静で居られる。

なんて言ってるけれど、本文の方は藤圭子が自分の言葉で自らの半生を振り返る貴重な内容だ。彼女に興味がある向きは読んで損はないだろう。その点に異論はない。結局、読む前から私が言っていた事…何故昨年10月なんてタイミングで発売したのか、そして余計どころか意味不明の域に達している後記(今回の刊行にあたって追加されたもの)の存在が、この出版物の存在価値を危うくしている。

特に、「宇多田ヒカルさんに読んで欲しい」というのは何様のつもりなのか。まぁ彼女の事を知らないから仕方がないかとは思うが、であればなおのことしっかり連絡をとって了承を得てから刊行すればよかったのだ―といえば聞こえがいいが、恐らく実際は違う。そんな事をしたら、了承を得られないだろうから事後承諾のかたちをとったのだろう。幾ら何でも、こんなものを娘に読ませたらどうなるか想像のできない沢木耕太郎ではあるまい。もし素でこんな後記を書いているなら、暫く文筆業は休んだ方がいいだろう…

…って、やっぱり楽しい内容にならないなぁ。私のこの本に対する印象や感想は、読む前と何も変わらない。藤圭子さんの印象も変わらない。ただ、彼女の人生における具体的なエピソードを沢山知れた点は、とてもよかった。なるほどなるほど、と合点のいく事が次々と出てきた。その意味では、読んでよかったかな。しかし、やっぱり歯痒い思いは残る。ヒカルがこの本を読んでいない事を祈るばかりだ。幾ら何でも、早過ぎる。