無意識日記々

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LuvLive05 Another Chance

LuvLiveの5曲目はAnother Chance。この歌でのヒカルの歌唱はほぼ完璧と言っていい。他の歌のパフォーマンスに不満を持つ人もこの出来には文句を言うまい。あんまりにも出来がいいので、邪推だが「これ梅田ヒートビートの方の音源じゃないの?」と疑いたくなる程だ。しかし、イントロ間奏アウトロとアドリブを差し挟んでいるので、これがまるっきり差し替えという事は有り得ない。一部、ちょっと気になる場面はあったけどね。ええっと、あそこだ、『終わりのない迷路の中で君にもう少し近づきたい』の所で『少し』って小さく合いの手が入ってるんだけども、あそこ歌ってるか? ちょうど絵が引きなのでようわからん。

まぁ、そういった細かい点にはツッコミも入れられようが、全体的にはこの歌がライブそのものである点には疑いがない。それは今さっき言った通りイントロ間奏アウトロでヒカルがアドリブを入れているからだが、そこにもう一つ強力な理由が加わる。それは、ヒカルが今剛のギターと絡み合いながら即興で歌っている点だ。その場の双方の相互作用で歌っている以上、片方だけを差し替えると不自然になってしまう。よって差し替えはありえない。

今剛。昨夜はTBSに出演して寺尾聰の「ルビーの指環」でギターを演奏していたらしいが、そもそも32年前のオリジナルテイクでギターを弾いているのが彼なのだから何というか歴史って凄い。勿論彼も当時は若かったのだが今や日本を代表するギタリストの1人といえるだろう。彼のプレイにはいつも痺れさせられている。

そんな彼なので、ライブの演奏は基本お任せだろう。ヒカルや照實さんが指示を出すというより、2人とも次に今剛が何を弾いてくれるか楽しみにしながらレコーディングとライブに臨んでいるのではないか。

そんなヒカルの普段の視線と姿勢が、このAnother Chanceでは垣間見る事が出来るのだ。

絡み合い、と先程表現したが、超一流ヴォーカリストとギタリストのアドリブ合戦はイントロ間奏アウトロの3箇所でそれぞれ見事なコントラストを描いている。みていこう。


イントロでのフェイクはヒカルが冒頭から先導する。初舞台での即興でこれだけ"サマになっている"のには改めて吃驚なのだが、その後に見せる余裕は最早既に大物の風格である。彼女は一頻り歌った後、おもむろにステージ向かって右手の方を向く。そう、視線の先には今剛。彼がヒカルのフェイクを受けてそのままアドリブで応戦する姿がそこにある。ヒカルはそれを満足そうに見届けて歌に入っていくのだ。なんちゅう大物感。既に名のあるギタリストを15歳の女の子が"従えて"しまっている。つまり、ここでの即興合戦は、ヒカル〜今剛の順である。

間奏では一転して今剛が口火を切る。ヒカルもそれがよくわかっているらしく、一番を歌い終わったらすぐさまステージ向かって右手、今剛の方を向く。彼のプレイに一通り耳を傾けた後にヒカルは自らのフェイクを繰り出すのだ。『Take it away, take it away〜♪』の部分ね。ここでのヒカルは、今剛のフレーズを受けて歌い出しているのだから即興の順序は今剛〜ヒカルだ。

そして一番の見せ場はアウトロである。こちらは、双方が交互にアドリブで攻め立ててくる。どちらが先という事もなく、即興によって"会話"が成立しているのだ。しかも、ただ直前の相手のフレーズを引用するのみならず、二つ前くらいから引っ張ってきて混ぜ合わせるとか、相手が言い終わらないうちに同じフレーズを被せてくるとか、時間はかなり短いのだが実に濃密なやり取りが交わされている。これぞライブならではの緊張感。醍醐味と呼ばれる所以であろう。


しかし、残念ながらこの曲での今剛のギター・サウンドは音が小さく、詳細なフレーズが聞き取りづらい。カメラワークも(多分この曲での彼の活躍ぶりをわかった上で)随分と彼の手元を撮してくれるのだが、如何せん音が聞こえてこない。しかし、ヒカルの歌にはダイレクトに影響を及ぼしているのだ。だから、ヒカルの即興がどんなラインかを確認した上でもう一度彼のギターサウンドを聞き取ろうとこの曲に耳を澄ましてみれば、さっきよりはかなりよく聞き取れるようになるだろう。スポットライトを浴びない黒い空間の中に輝く彼の勇姿っぷりがよくよく確認出来る筈である。



―長くなったのでまとめておくと、Luv LiveのAnother Chanceのアドリブ合戦は、イントロがヒカルから今剛へ、間奏が今剛からヒカルへ、アウトロが双方による相互作用で、それぞれフレーズが展開している。映像を見ながら、嬉しそうにギタリストの方を見やるヒカルの笑顔と彼のギタープレイを、DVDで今一度確認してみましょうぞ。