無意識日記々

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最後の1行で共感してくれる人が増える予感がする話(笑)


『SCIENCE FICTION』の好評の要因の一つに、一昨年から続く『First Love』のリバイバルがあると思うのだが、同曲を記事に取り上げてくれる時に「今でも色褪せない名曲」と紹介される度に、モヤる。そもそも曲って色褪せることあんの?


もともと「色褪せる」ってのは、絵や写真が経年劣化で見た目の彩度を落とす事が由来だろう。本が日焼けするとかもそうだよね。でも、音楽って基本蓄音機が出来た時以降、その時の録音のクォリティでずっと残ってるもので、例えばテープやアナログレコードが経年劣化したらまともに再生できないだけなので色が褪せるとか、ない。流行していたその時の音質で今でも再生できる。というか、再生機器の発達やアップグレード技術によって当時よりいい音で再生できることもあるくらい。つまり、音は色褪せたりなんかしないのよ。


なのにこう言われてしまうのはなぜかっていえば、「その時々で人々が勝手に色をつけてるから」でしょう。流行ってる時に本来曲にはない色をつけて、或いは色眼鏡を通して見てたものが、流行から外れて以降はそれがなくなって、素の音源に、元々の姿にやっと戻れているというだけで。


同じく「今聴いても古臭くない」もモヤる。褒め言葉のつもりなのだろうから個別に誰がいつ言ったとかは興味ないけど、古臭いのってよくないことか? ビンテージとかクラシックってこったろ? その年月だけ生き残ったってこったろ? ビートルズピンク・フロイドも凄く古臭いですよ。如何にもそれぞれ60年代らしい、70年代らしい音で鳴ってる。そもそも彼らがその60年代らしさ70年代らしさを作り出した/定義づけた張本人の方なので当たり前っちゃ当たり前なんだけど、凄くその時代の空気が濃密に込められていて、如何にも古い。そしてそれが大きな大きな魅力だ。


細かい事を言えば、『First Love』だって古臭い。今では配信で2018年版リマスターとか2022年版ミックスとかが聴けるのでそれほどでもないけれど、1999年に出たCDの音は今聴いたらきっちり25年前の音だもの。そしてそれは特にネガティヴな意味を持たない。


あれですね、新しい世代の流行を仕掛ける度に一つ前の流行に対して「◯◯はもう古い」っていちいち言って切り離してるからですかね。その度に本来の音楽にない色を勝手に彩色して、時期が過ぎたらその色眼鏡を取り外して色褪せたって言ってるそのサイクルが、「色褪せない名曲」というフレーズを生んでるのかな。いい曲は生まれた時点でいい曲だし、それはどれだけ時を経ても変わらない。録音されたデータは、特に今はデジタルだから何も変わらないんだもの。絵画や写真とはそこが全然違うのですよ、繰り返し言うようだけど。


音楽はその時々の記憶を鮮やかに甦らせてくれるものだから、年月を経れば経るほどその鮮やかさは確かに増す。でもそうなれるのは、こちらが勝手に忘れてるだけで音楽の方は変わらないからだよね。色褪せないとか古臭くないとかいうフレーズを言うのは、お前が勝手にただ痩せたってだけなのに「あなた太ったよね?」ってこっちに言ってくるようなもんなのですよ。こっちと関係ないわお前が痩せようがどうしようが!(笑)