無意識日記々

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広告宣伝生存戦略

さて今日6月9日はEMIA&Rの梶さんの誕生日、だよね? まぁ別に違っててもいいや。A&Rが今何を考えているか。

前も書いた通りCDの価格を決定付けているのはレコード会社が持ち出している制作費と広告宣伝費だ。これを宇多田ヒカルの場合どう振り分けているか。

あまり制作費は掛かっていない、というのが見立てである。元々そんなに沢山のミュージシャンを雇う訳でもないし、近年は自宅かそれに準ずるスタジオである程度デモを仕上げてからスタジオ入りしていそうな雰囲気があるので、スタジオ代も他に較べればそんなでもないだろう。フルオーケストラでも使うなら別だけど。ここは、かなり節約できるとみていい。

難しいのは広告宣伝費だ。ここは、比重が増せば増すほど枚数を売らなければならなくなる非常にバランスを取るのが難しい項目。どこに何を宣伝すればどれだけのリターンがあるか見極めねばならない。これこれだけの予算が取れるからといって目一杯、と頑張っても、一定以上は掘り返せるニーズがもうないかもしれないし、あと一押ししておけば売上が何倍にも膨れ上がったかもしれない所で予算にも限界があるからと引き下がっていてはこれもダメだ。本当に読みづらい。

一定程度に専門的なジャンルであれば、中身を聴いてそのクオリティーで売れる枚数は把握できる事が多い。しかしヒカルの相手は大衆だ。中身を聴いただけでは何もわからない。

そしてもはやその大衆向けの市場はないに等しい。ランキングをみてもアイドルとアニメ関連が半分を占めている。

ここで考えるべきは、どちらに展開するか、だ。嘗てのように大々的にマス・アピールするのか、それとももっとこぢんまりと、確実に買ってくれそうな層に絞って、広告宣伝費を抑えて売り込むか。

3月に、A&Rの戦略として興味を引く事例があった。例の、ヒカルが"SMプレイ"と形容した渋谷のビルボード広告だ。1日だけではなく、一週間とか十日とか、兎に角かなりの期間に渡ってFirst Loveのジャケット写真が飾られていた。あれは何を意味するのか。

First Loveは再発盤である。特に豪華盤は、コアなマニアに向けた仕様だった。そんな中で、渋谷のビルボードを占拠したからといってそれをキッカケに豪華盤を買い求めた例など、全体からみれば僅かな筈だ。もっと砕けて言えば、渋谷中のレコードショップの店頭在庫にある宇多田ヒカル商品が総て売り切れたとしても、とてもビルボードにかかった宣伝費はペイできない。そういう事だ。

嘗ては、渋谷はトレンドセッターだった。渋谷で今日売れたものは明日全国で売れる。即ち、渋谷のビルボードは、全国に向けた宣伝という意味合いも強かった。しかし、今回のビルボードをどれだけの媒体が取り上げたのだろう。どれ位の人が目にしたのだろう。そう考えると心許ない。

これはつまり、もっと長い目でみた戦略なのだろう。これからも宇多田ヒカルは、マスに向けて全国にアピールしていく、という。しかし、その知名度に見合った商業的成果がそこまで期待出来るのか。確かに、EVA&KHは鉄板コンテンツで、今後も揺るぎはしないと思うが、こちらをマスと認識するのは難しい。

ある意味、アドバルーンだったのかもしれない。FL15プロジェクトによって、EMIA&Rは宣伝戦略を練り直したのではないか。その成果が、これから現れてくるだろう。彼らがどんな反応を得てどんな作戦を実践するのか。外からぼんやり眺めながらちっちゃく応援していく事にしますかいな。