無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

裾野の無い山に登る人登らない人

妖怪ウォッチの新製品が品薄を起こして転売市場で高値で取引されている、というニュースを読んだ。毎度言っているように、価格と生産量を最適化すればこういう問題は起こらない、のだが一般消費者の間にそういう認識が広がっているとは言い難い。野菜が不作の時に野菜の値段が上がるとかには慣れてる筈なんだけどねぇ。娯楽商品もそれと同じ、という風潮にはなかなかなっていない。

こういう時に真っ先に疑われるのは製作側によるブランディングだ。品薄で希少価値感を煽るという手法だが、それは確かに戦略のうちのひとつだろうから私は特に問題だとは思わない。ただ、その戦略をとっておきながら転売者の存在に疑義を唱えるとなればアンフェアだなとは思う。適性価格に是正している転売者の方が、市場をより健全に保つ作用を担っているのだから。

その理屈に沿ってくれたのかどうかはわからないが、Fl15豪華盤は立て続けに増産が決まり、結果今は売れ残っていて、例えば今はAmazonでの値段が12000円前後と8割程度の価格で推移している。新作DVDでさえ3割引で売る場所なので単純な比較は出来ないが、"供給過多"に陥っているのは間違いないだろう。

これは私も誤算だった、と平謝りしなければならない。ごめんなさい。最初、最終的な需要量は20000枚位と予想していたのだ。その為、総生産数15000という数は、すぐに売り切れる事はなくても価格を定価帯に維持するには適切だろう、と踏んでいた。しかし現実は違っていた。

最初の最初に5000という生産数をきいた時、いつも通り「8000〜10000は売れるから増産できるならすべきだ」と提言した。その為更に5000追加して合計10000とした時は「うん、そこまでは堅い。暫く様子を見てみよう」となった。のだが実際にはすぐさま更なる5000が追加された。これは、つまりその時点でEMIが把握していた予約希望数が10000を超えていたという事だ。

多分、ここからが"異常事態"なのだ。そこまで初期に予約が"殺到"しておきながら15000が売り切れなかった、というのが。ここが予想外。つまり、熱心なファンがぐわっと居て、そこから興味関心度がなだらかに裾野を作っているのではなく、いきなり誰も居なくなるのだ。エアーズロックというか、ロストワールドというか。

これが今の市場全体の特徴なのかそれとも宇多田ヒカルに固有な状況なのかは、わからない。15000円という価格設定があだになった、ともいえる。それだとしても極端である。Webの普及によって情報伝達スピードが上がり、最初の最初に取捨選択が行われその時に捨てられたら二度と選択肢として浮上しない、といった状況がパターン化しているのであろうか。となると、今後もますます日本市場は"初動特化型"のプロモーションに偏っていく事になる。良し悪しは別として、話はそこから始めないといけない。ひとつの曲をじっくりと育てていくのは、もう無理なのかな。いや、どうだろう…。