無意識日記々

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『忘却』

そして9曲目のタイトルは『忘却』だ。今まで同様まずは何も検索しない状態で色々綴るぞ。これを書いてしまえば以後は情報提供大歓迎。私も色々と調べ始めるからね。

このタイトルを見た時は「おぉっ」となった。遂に、というべきか、あれだ、「忘れる話を始めたら年寄り」の法則を歌詞について考えていたので、どうしても目についたのだ。

若人は忘れない、という訳ではない。若者だって忘れる。いや、例えば「忘れ物」についていえば、人生経験豊富な方が忘れ物をしないし、ウッカリとかケアレスとかで忘れる事も、経験を積んだ方が減る。

歳をとって忘れ始めるのはこれからする事についてではなく過去に得たもの、特に思い出と人とモノの名前だ。本当に出てこなくなる時は出てこない。前もさんざ話したが、一度声優の三石琴乃の名前が出てこなくなった事があっての。セーラームーン葛城ミサトだワンピースのハンコックだと彼女の演じるキャラクターの名前は次々と出てくるのに肝心の彼女の名前だけが出てこない。そん時に「俺も歳をとったなぁ」と痛感した。そんな風にしてきっと自分の名前も忘れていくのか。自分の名前とヒカルの名前と、出てこなくなるのどっちが先だろうなぁ。若者と違うのは、この感覚を持ち始めるところである。


昔「追憶」という映画はあったが、「忘却」という作品はあったかな。英単語だと"oblivion"だ。メタルの歌詞では頻出である。魔法を掛けられて思い出せなくなるとか、滅ぼされて忘れ去られるとか、そんな風な文脈で扱われる。「FORGOTTEN TALES」なんてアルバム名やバンド名もあったな。忘れ去られた物語。歴史の長さと奥深さを感じさせる為の言葉である。

『忘却』。今までのヒカルは「あなたとの事は絶対に忘れないからね」みたいなイメージが強かった。『First Love』からして『I'll remember to love』で『忘れたくないことばかり』だ。『forever still the one』はまさに「あなたの事を忘れない」宣言。やっぱり最大のヒット曲にはつられるな。

一方『Flavor Of Life』では『忘れかけていた人の香りを』と来るのだけれどもこれは勿論『突然思い出す頃』に繋がるので忘れる話ではなくて覚えていて思い出す話だ。基本的に、そんな風である。


となると、『忘却』というのは、ヒカルにとってかなりチャレンジングなテーマになっているかもしれない。別れた恋人との過去を葬り去って「もうその人の事は忘れちゃった」と「女の恋は上書き保存」を地で行くのか(ちな!みに「男の恋は名前を付けて保存だ)、それとも、もっとスケールの大きな、ひとつの国が滅び去って忘れられた物語でも紡ぐのか。イマジネーションばかり掻き立てられる二文字である。

しかし、私はいつになく警戒している。『真夏の通り雨』が、タイトルから直接得たイメージと真逆の内容だったからだ。『降り止まぬ』の五文字が、世界を、総てをひっくり返した。『忘却』にもそれがないとも限らない。忘却を否定する物語なのかもしれない。今のヒカルは全く油断がならない。だからこそ、情報を限った時点で色々と妄想しておくのだ。この心地よい甘いワナに自らかかってしまおう。もしかしたら、羽子板で負けるが如く顔を真っ黒に塗りつぶされてしまうかもしれませんがw