『COLORS』で印象に残った英訳詞といえば
『わざと真っ赤に残したルージュの痕』
のところだ。
まず前座としてGoogle翻訳にかけてみよう。
"Rouge marks on purposely left in red"
うん、まぁ順当かな。"Rouge marks"は『ルージュの痕』、s
"purposely"は『わざと』、"left in red"は『真っ赤に残した』だからほぼ直訳だ。特に不満はない。
これがヒカル訳だとこうなる。
『A bright red smear of lipstick that I left intentionally』
随分と"文学的"な表現だ。些かもってまわっている。特に、英語でも"Rouge marks"で構わない『ルージュの痕』をわざわざ『smear of lipstick』即ち「口紅の塗り痕」と言い直してるのが興味深い。
ここに"意図"が見え隠れする。「ルージュ・マーク」だとどこか象徴的でやや自己顕示的だが、"smear"にはどうも"いやらしさ"というか、悪意的に気づかれないように塗りつけたような雰囲気がただよってくるのだ。"intentionally"で既に「意図的」という意味があるからここが『わざと』にあたるのだが寧ろこの"smear"の方が日本語での"わざと感"を出すのに一役買っている気がする。"intentionally"と"smear"の合わせ技で『わざと』の訳なのではないだろうか。
こうやって英訳してくれると元歌詞の細かな機微がより明快に伝わってくる。もっと読んでいきたいものである。