無意識日記々

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やれやれタイム

ここをそれなりに読んでる方ならお気づきだったかと思うが、最近この日記は『Distance』づいていた。『For You』、『Wait & See 〜リスク〜』、『Parody』などを積極的に取り上げていた。それはつまり、そろそろこの頃の作風の曲が来るだろうという予想…と言うよりも、期待だな、があったからなのだが『Time』がまさにそれで嬉しい。

とはいえ、実は直前にはそうは思っていなかった。『Time』というタイトルを見た時に「あぁ、そっちじゃないのね」と判断してしまったからだ。見事に大ハズレでしたとさ。

なので、このタイトルを除いては『Time』の曲調は待ってましただった。イントロをエレピ系のシンセで始めてヒカルのアドリブに繋げる雰囲気はまんま『time will tell』や『In My Room』を彷彿とさせる。やや低めのマイナーキーのコード進行から四つ打ちを基本にしつつ混合拍子気味のスネアとキックの組み合わせで迫ってくるのは『For You』を思い起こさせる。更になんか後ろでチキチキ言ってる。『Addicted To You』とかだね。結果、サウンドの与える印象はヒカルがデビューしてきたあの90年代後半のR&Bサウンドになっている。20年前のレトロサウンドだ。

しかし、それは「あの頃のサウンドをそのまま再現した」のとは少し違う。寧ろ、「2020年の今聴いてレトロに響くような音」というリアルタイムなコンセプト。ノスタルジーそのものを表現しているとも言える。案外野心的で、ヒカルらしくない。

実際、その頃の音色だけで音が出来ている訳では無い。例えばイントロのアドリブにはオートチューン風のエフェクトが掛けられていて、大雑把に言ってヒカルには初めてのことだ。Jay.Zが"Death of Auto-Tune"を発表したのが2009年の事だから、それより少し前の流行である。また、『孤独にも運命にも』の直後にねじ込まれてくるシンセベースはムーグサウンドで、これは70年代後半〜80年代前半の音だ。ヒカルがこういう「歴史を概観した音作り」をしてくるのは極めて珍しい。特に、ベースの音色は(ベースラインには凝らない癖に)時代を反映するということでかなり敏感な筈で、こういうことは全くといっていいほどやってこなかった。全体としてレトロなイメージを聴き手に与えてはいるが、それは総てがまさに“イメージ”であって、結局のところこれは2020年のサウンドだ。かなり攻めている、とみていい。

ま、大体“犯人”の目星はついている、のよね。最初日曜晩にアクセスした時はなかった『Time』クレジットが、月曜の日中にYouTubeにアクセスしたら追加されていた(PCにキャッシュが残っていたから間違いない)。それをみると、コ・プロデューサーのところになりくんのお名前が。「また違和感の原因はお前かよ」ということで、『Laughter In The Dark Tour 2018』のセットリストに続いてヒカルのセンスを撹乱させに来ているのね。仲違いはこちらの勘違いだったようで何よりだし、プロデュースした貰った相手をプロデュースし返すなんて結構大胆なのだが、この2人、『Time』についてのインタビューには答えてくれているのだろうか。訊きたい事は山ほどあるのだが、きっとまた炎上するのだろうから、今から「相変わらずめんどくせーなコイツ」と呟いておきたい。やれやれだぜ。