無意識日記々

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しっとり・サラサラ・シリアス・ダーク

インスタライブ第3回で待ちに待った「最近気に入った(英語の)アルバム」の話が出た。誠に嬉しい。いやホント、インスタライブは偉大だわ…。

でそれはなんという作品かというとJ Husの“Big Conspiracy”ってアルバムなんだそうな。早速聴いてみた。ふむふむ。

まずは、私ゃ彼のことをよく知らないのでWikipediaから引き写しておこう。

─ J Husは1996年生まれのラッパー/シンガーソングライターでガンビアとガーナをルーツに持つアフリカ系英国人。アフロビートと英国的陰翳をミックスしたアフロスウィングというサブジャンルの先駆者のひとり。2017年リリースのデビューアルバムは全英6位、今年2020年1月にリリースされたセカンドアルバムであるこの"Big Conspiracy"は全英1位を記録、主に英国で人気を博すアーティスト。

……てな具合。

同アルバムについても、私はこのジャンルの作風を語れる語彙がないのでWikipediaからレビューを引き写しておこう。

─ 英国ラップ/ヒップホップ・シーンにおいて多大な影響を齎すであろう一作。グライムやアフロビート、ジャングル等々のサウンドを網羅し、そしてそのどれにも留まらない独自のサウンドを確立した後続への刺激に満ち溢れたアルバム。

……ということ、らしい、よ? …つまり今英国で最も旬な一作なんだねw

で、聴いてみた感想なのだが。なるほどね。ヒカルが「曲っていうよりアルバムとして好き」みたいなニュアンスで言っていたのがよくわかる。単純に、こういう雰囲気のサウンドがずっと続くと心地よいのだろうな。

ヒカルの曲で喩えるなら、『In My Room』とか『Never Let Go』のような雰囲気だ。シリアスだが情熱は前面に押し出さず、シックで落ち着いていて、ある程度の哀感は湛えるものの湿り気が粘り気にならないサウンド。しかし、本質的には根暗だよねキミ、っていうあの音作りな。いわば「しっとり・サラサラ・シリアス・ダーク」なR&B/ヒップホップ・サウンドだよね。

弦楽器や管楽器、鍵盤楽器まで駆使して様々な音を時にシンプルに、時にゴージャスに奏でる一枚だが、その“しっとりサラサラシリアスダーク”なサウンドで終始一貫しているのでヒカルは折に触れてBGMとして重宝しているのではないかなと。

そんな中で1曲選ぶとするならば、どちらかといえばアルバムを代表するというよりはゲストのお陰で異彩を放つ事になった"One And Only"だろうかな。歌うはこれまた英国人歌手のエラ・メイ。1994年生まれで2019年のグラミー賞“Best R&B Song”部門を受賞しているオーソドックスなR&Bシンガーだ。この"One And Only"は実に90年代的な曲調で、言うなれば「こういう曲が『Hikki's Sweet & Sour』では幾つも掛かっていたなぁ」という印象。もっと言ってしまえば、ラッパーとメロディアスなコーラスの共演ということでどこか"Blow My Whistle"的でもある。曲として似ているわけではないけどバランス的にね。故にヒカルのファンがとっかかりに聴くならこれだろうかな、と思いました。イントロは『虹色バス』みたいだしね。

それにしても、あらためて、嬉しいねぇこういう話がリアルタイムで聴けるというのは。こういうサウンドが今ヒカルの好みという話と、我々が聴いている最新シングル『Time』がそれこそアルバム『First Love』や『DISTANCE』の頃を彷彿とさせている事実とがシンクロしていく。更に、前作『初恋』の『Too Proud』から補助線を引いて、メロディアスなラップ/ヒップホップ・サウンドを今後も更に取り入れていくのかなとかの妄想も掻き立てられる。毎日が楽しくなるんだよ、ヒカルの“今”をほんの少し知れるだけで。こういう風に。

更にもっと踏み込んで言うなら、もしかしたらヒカルさん、既にJ Husとお知り合いなのかもわからない。お互いロンドンに住んでるんだし一流ミュージシャン同士だし。前回溜息を吐いた通り、ミュージシャンなんてどこで誰と繋がってるかわかったもんじゃないからね。次のアルバムで「Utada Hikaru featuring J Hus」なクレジットが来ても喜べるよう、今から彼のサウンドに馴染んでおくと、何かといいかもね。

まーそれはなかったとしても、今後の宇多田ヒカルサウンドを占う上でとても興味深いピックアップだった事は、間違いないでしょーね。