インタビューの内容より先に単語の話になっているのは、この"vulnerable "がインタビュー全体のキーワードとも言える語だから。先にここのニュアンスを細かく把握しておいた方がインタビューを素直に味わい易い。
てことで前回のお浚いをしつつ。
機械翻訳で
『it was so vulnerable』
を
「それは脆弱だったので」
「とても傷つきやすかった」
の2通りに訳してもらった。
どちらも辞書上は正解。
だが、「脆弱」という語は少し印象を誤るかもしれない。パソコンや携帯電話を触っていて出てくる「脆弱性」は「弱点/ウィークポイント」であり「付け入る隙」を意味する事が多い為、「即座に改めなければならないもの」「取り除くなり埋めるなりしなければならないもの」というイメージがあるからだ。しかし、このヒカルの言う“vulnerable "はそうではない。寧ろ、それをそのまま受け入れたり許したりする事が大事。なので、特に我々宇多田ヒカルリスナーは
「とても傷つきやすかった」
の訳を採用する方がいいだろう。この「傷」を使った言い回しは、即座にヒカルの名曲の歌詞の数々を想起させていくからね。例えば…
『傷つけたって 傷ついたって』
(B&C)
『泣いて笑って きずつくのもいいけど』
(In My Room)
『笑える話 傷つけられても』
『癒せない傷なんてない』
(Wait & See 〜リスク〜)
『傷つけさせてよ 直してみせるよ』
(For You)
『傷つき易いまま オトナになったっていいじゃないか』
(タイム・リミット)
『少しの冒険と 傷つく勇気もあるでしょ』
『悪気のなさが玉に傷』
(蹴っ飛ばせ!)
『ひとことでこんなにも傷つく君は孤独を教えてくれる』
(DISTANCE/FINAL DISTANCE)
『ちょっと傷ついて』
(KIss & Cry)
『傷つくことも大事だから』
(Stay Gold)
『見えない傷が私の魂彩る』
(道)
『傷ついたのは お互い様だから』
(大空で抱きしめて)
『傷ついた時僕は一人静かに内省す』
(Play A Love Song)
『言葉一つで傷つくような ヤワな私を捧げたい今』
(初恋)
『鏡のような海に 小舟が傷を残す』
(夕凪)
『一人で生きるより 永久に傷つきたい』
(誰にも言わない)
『誰かを求めることは 即ち傷つくことだった』
(One Last Kiss)
『傷つけられても 自分のせいにしちゃう癖』
(PINK BLOOD)
『傷つけてしまわないか?』
(BADモード)
…って、え、こんなあんの!? 思い出してるうちにどんどん増えてきたから検索もしてみたけれど、『蹴っ飛ばせ!』の『玉に傷』とか全然思い当たらなかったよ、、、これまだ取り零してるのあるかもしんないな。
てことで、『傷』のついた歌を列挙してるだけで時間がなくなっちまったよっ(汗)。ここから以降の解説は次回に委ねますね。