無意識日記々

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SF初週18万枚越え&シリアル応募考察


『SCIENCE FICTION』1週目の売上が出てるわね。


ビルボード宇多田ヒカル『SCIENCE FICTION』18万枚超えでアルバム・セールス首位獲得

https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/136693


宇多田ヒカル、「年齢4年代連続アルバム1位」達成 竹内まりや松任谷由実安室奈美恵さんに続く快挙

https://www.oricon.co.jp/news/2322864/


25周年の宇多田ヒカル、初のベストアルバムが女性アーティスト今年度最高初週DL数に【オリコンランキング】

https://www.oricon.co.jp/news/2323034/



まぁ凄い。思いっ切り私の予想は外れました。あらら。


真正面から言い訳すると、「初週6万枚程度」という予想は、「もし仮にシリアル応募の当選確率を2月抽選分の当選確率より高くしたいのなら」という仮定に基づいたものだった。どうやらつまり、この縛りはなかった模様だ。


ただ、もしその仮定を外してたとしても恐らく「9万枚台」と答えてたと思うのでまぁ五十歩百歩だわね。根強いCDリスナーの厚みを見誤ったってことか。反省して次に活かします。いやぁ、最早恒例になりましたが、私がレコード会社担当でなくて本当によかったわ。(無駄にポジティブ)


そして、ここまで持ってきた宇多田公式スタッフの有能ぶりな! 素晴らしいわ。こちらがキリキリ舞いになるほどの怒涛のプロモーション攻勢で令和の時代にここまでCDを売った彼らの手腕を素直に称えたい。おめでとう&ありがとう。


………あたしだっていつも公式に対して辛辣ってわけじゃないのよ?



で。問題なのは。すぐにわかる通り、「シリアル応募の当選確率は、2月応募分当選確率の“約70%”より遥かに低い」という事。このままだと20%台になる計算だよね。


勿論シリアルには「アップグレード権」もあるので、2月当選者の皆さんがプレミアムチケットを狙う分は差し引かねばならないが、そこまで多いかなぁ?というのが正直なところでな。折角CD買ったし試しにやってみるか、とはなるだろうけどねぇ? チケットのお値段を考えると、そうそうレギュラーからの鞍替えチャレンジは難しいんでないかな。初めてのことだし、やってみないとわからないけど。


てことで、当初は「なんでそんなルールにすんねん」と思っていた「同一公演複数回応募可能」の項目も、ここに来てかなり意味のあるものになってきたかも。当選確率が70%から85%になっても大した変化はないけれど、20%が60%になるとくれば随分違うからねぇ。「どうしてもこの日に行きたい」というのであれば、同一公演複数回応募も考慮に入れるべきかなぁ。あと、レギュラーとプレミアムの比率もわからないから、「席はどちらでもいいからこの日に行きたい」という人は同一公演でレギュラーとプレミアムどちらも応募するというのもアリかもしれない。


しかしどうなんだろうね? 大丈夫なんかなフリーの応募よりCD購入者限定シリアル応募の方が当選確率低いなんて。しかも半分以下になりますよこのままだと。流石にクレーム来やしませんかね? これだったら最初っから「CDシリアルはあクマで救済策です。2月応募がメインです。」って大々的にアッピールしといた方がよかったんじゃないか。今更言っても後の祭りですかそうですか。


台湾公演に至っては4月12日に発表になってもう今日〆切なんすか。それが終わってから香港の日程発表ってことかね。計算されてるんかな。つまり12日の「?」と今日17日の「?」は、前者が台湾公演発表、後者が香港公演発表、って流れになるのかなぁ? これについては今日の公式発表を待ちましょう。とりあえず今の所0時と4時の発表はなかったっぽいし。


シリアル分応募は月末4月30日23:59まで。それまでに買い増すみなさんは、通常盤を購入する際はくれぐれも気をつけてね。シリアルは“通常盤初回仕様”にしか封入されてないから。シリアルが封入されてるかどうかをしっかり確認の上でレジに持って行きましょう。


あーこんなにプロモーションが多い中でチケット応募の検討もしなくちゃいけないなんて、ほんに、うん、ちゃんと自分のリズムで、いきましょうね(^^)

「今の私にあの頃の感情はもうない」


@Hikki_Staffのツイート。ヒカルの英語インタビューの紹介なのだがこれが凄い。


Check out Hikaru Utada's exclusive interview with Bandwagon, looking back their 25-year path through SCIENCE FICTION


https://www.bandwagon.asia/articles/hikaru-utada-interview-science-fiction-greatest-hits-album-tour-2024-listen


https://x.com/bandwagonasia/status/1779759133262332217?s=46


https://x.com/hikki_staff/status/1780051985326362939?s=46



いきなりなんちゅう内容の濃いインタビューをタダで公開してくれとんねん。これから有料で読ませてくれる音楽雑誌とかがかたなしになってしまうやないか…。機械翻訳の精度も十分上がってきてるので半分くらいは意味がわかると思うし、誤解を与えるタイプの誤訳も今の所見当たらないけど、重要なとこだけでもいつか訳してみたいなぁ(多分何十年後とかのスパンの話をしてるぞ俺)。


まぁ、同じ内容を日本語インタビューアさんが訊いててくれたら済む話なのでそこらへんは暫くは静観するとして、おそらくここらあたりは日本語のインタビューでも答えてくれてるだろうポイントをいくつか取り上げてみたい。



『Timing-wise, it also felt like the format of a best hits album itself probably won't exist in the near future, so I felt like maybe this is a really nice time to do one.』


今回はdeeplくんに訳して貰ってみる。


「タイミング的にも、ベスト・ヒット・アルバムというフォーマット自体がおそらく近い将来存在しなくなるような気がしたので、今がベスト・ヒット・アルバムを作るのに本当にいいタイミングなのかもしれないと思ったんだ。」


そうなのね、「そもそもベストアルバムというフォーマット自体がこの世から消えてなくなるかもしれないから」という懸念は、ヒカル自身も自覚していたのだね。あたしゃ前から「サブスクがあるんだからもうベストアルバムなんてプレイリスト配れば済むじゃん」って言ってたし、同意見の人も多かったろう。


なのでヒカルとしてはもうこれが「宇多田ヒカル最後のベストアルバム」のつもりで作っていたのかもしれない。ただ、結果的には私に「25年後にまたこれをやって欲しい」と思わせてしまう素晴らしいフォーマットを構築してしまった。これだけ全曲新鮮に聴かせてくれるなら、これを「21世紀のベストアルバムの新フォーマット」として定着させたいわ。まぁ、実質新しいオリジナル・アルバムを作るのと似たような作業量を経てる気がするので世の殆どのケースでは「だったらオリジナル・アルバム作るわ!」ってなるだろうことは想像に難くないけどな。


うん、でも他との比較なんて重要じゃない。ただ目の前の『SCIENCE FICTION』が素晴らしい。それが何より満足です。



あとここらへんも日本語インタビューで触れて欲しいやつだった↓


『But, say like, with Addicted to You,’ I honestly don't know if it was the best song to try to redo. I mean it sounds great, but it was really difficult to sing it because I just don't have those emotions, those types of feelings anymore – I don't think in that specific way. It's about a co-dependent, a bit of an unhealthy attachment. In a way, it made me understand the ways I've grown or changed, or things I've learned in this time. I felt like I met my 16- or 17-year-old self. So, that was great.』


これをdeepl君にお願いしたらいちばん肝心な一文を飛ばしやがったので今度はGoogle先生に頼んだ。


「でも、たとえば「Addicted to You」に関しては、やり直してみるのに最適な曲だったのかどうかは正直わかりません。つまり、素晴らしいサウンドですが、それを歌うのは本当に難しかったです。なぜなら、私にはそのような感情、その種類の感情がもうないからです – 私はそのように具体的に考えていません。それは共依存の、少し不健康な愛着についての話です。ある意味、この期間で自分がどのように成長したのか、変わったのか、あるいは何を学んだのかを理解することができました。 16、17歳の頃の自分に出会ったような気がしました。それで、それは素晴らしかったです。」


発売直後のタイミングで「選曲が最適だったかわからない」だなんて凄いこと言うねぇ。だが、だからこそ良かったのよね。書いてある通り


「それを歌うのは本当に難しかったです。なぜなら、私にはそのような感情、その種類の感情がもうないからです 」


ここが大きなポイントとなるのだから。大人になって、あの頃の焦燥感や不安定さはもうない。そうなった時にどんなアプローチで歌ったか…嗚呼、そういう各論に入ってしまうと今月のプロモーション攻勢から隔絶してしまうのよな! だから今回はここで止めとく!


嗚呼、悩ましいわ。だってまだこのブログで「with MUSIC」の『二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎』について一言も触れてないんだぜ!? どうなってんの?? …いやまぁそんなのあたしの匙加減ひとつなんだけど、今何をどういう順序で書いていけばいいか本当に難しいのですわ。明日以降も悩みながら行きますわね。

40代の方がイケイケ!?


トレボヘを聴いてても「ヒカル、喋りが若返ったなぁ」と思う。冒頭で昔のトーンを再現してみせてたけれど、あれってトークだけじゃなく、歌でもやってみたんじゃないかな。リレコーディングする曲を選ぶプロセスの中でまず歌ってみて、何がどう違うのか、変わったところ変わってないところをチェックしていって、過去の自分の歌い方を試しになぞってみていた気がする。


ちょうど今日は『Kuma Power Hour with Utada Hikaru』第1回放送記念日なので、聴き比べてみればいいのだけれど、この頃の、30歳のヒカルの喋りの方が寧ろ落ち着いているくらいだ。最近年齢をクローズアップされる事も増え、「41歳なのにこんなに」と形容されるようになってきたが、確かにアンチエイジングというか、若返ってすらいる印象が強い。まぁ中には老けたなっていう人も居るんだけど、どうやら全体的に鍛えて筋肉質になった見た目の変化を勘違いしてるケースもあるっぽいな。


これ、音楽性の変化にも言えるのよね。前から触れているけれど、あたしは2018年のアルバム『初恋』を聴いて、随分と曲調が落ち着いてしとやかになったなと思ったし、実際同年の『Laughter In The Dark Tour 2018』では黒のロングドレス姿が印象的だった。なるほど40代を迎えるにあたってこういうスローダウン的なモデルチェンジかと思っていたら、2022年のアルバム『BADモード』では再び…というか過去最高にダンサブルな曲が増え、非常に活気に満ちた作風へと変貌を遂げていた。ヒカルも同作制作にあたっては、21歳の時にリリースした『EXODUS』が念頭にあったと言っていたわよね。『The Workout』みたいな扇情的でイケイケな曲が収録されている作品だ。


なるほど、この「若返り」の流れの中にそのまま『SCIENCE FICTION』が入っていると解釈するとわかりやすい。アルバムをバラード『First Love』ではなくよりダンサブルな『Addicted To You (Re-Recording)』から始めたのもそういうことかもしれない。『traveling (Re-Recording)』は最早定番ブランドとなったタイアップ相手の綾鷹すら若返らせる勢いだし、リズムを抜いた『光(Re-Recording)』の持つ幻想美は非常にフレッシュだ。そして新曲群。『Gold 〜また逢う日まで〜』が要請で半分バラードにはなっているがこれも元々ダンスチューンで、『Electricity』の王道四つ打ちぶり(+三連符の絶妙さ)はライブ会場を盛り上げずにはいられないだろう。トドメは『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』のSci-Fi Editですわな。イケイケの『BADモード』のイケイケぶりを象徴するど真ん中のダンスチューンをエディットしてビデオまで再編集する重用ぶり。どこまで意識したかはわからないが、結果として『SCIENCE FICTION 』は『BADモード』からの順当な進化形としての立ち位置にきっちり収まっている。やはりもうベスト・アルバムという呼び名は然程適当とはいえず、流石にオリジナル・アルバムとは呼べないものの、「2024年にリリースされた宇多田ヒカルのニュー・アルバム」というくらいには呼んだ方がいいのかもしれない。これを聴いたと聴いてないとでは、次のオリジナル・アルバムへの流れの理解度がまるで違うことになるだろうね。

『SCIENCE FICTION 2024 PROJECT』としてのリデザイン


宇多田ヒカルが新曲をリリースしたとなると毎回その日は10回くらいリピートしてしまうのが常なんだけど、今回の『Electricity』は全くヘビロテしていない。理由は単純で、アルバム全体が聴きた過ぎて一曲だけに時間を割く気にならないのだ。お陰で今の私にとって『Electricity』は、「宇多田ヒカルのニューアルバムのラス前曲」みたいな認識になっている。『Another Chance』とか『夕凪』みたいなもんだわね。


それくらい、全体が充実している。最初ベストアルバムをリリースすると聞いた時には全く予想していなかった事態だ。情報量が多過ぎてまるっきり消化出来ていない。あれだわ、自分の中でのキャッチコピーが、今まで散々書いてきた「宇多田ヒカル初のベスト・アルバム」から「宇多田ヒカル初の2枚組アルバム」に切り替わっとるわ(※ 勿論、本当はSC2の方が初ですよ)。嗚呼、ビートルズホワイトアルバムをリリースした時のファンとリスナーの気持ちってこんなだったのかしら。いや、あの凸凹な作品より遥かに押し並べて高品質だな。20世紀最大の音楽グループを袖にしたくなるほどのクオリティに、ちょっとまだ脳が追いついていない。


最初に曲順をみたときの「なんだこのチグハグさは!」という印象もまた、雲散霧消している。『Can You Keep A Secret?』のエンディングがあんなことになっているとは! 『光(Re-Recording)』があんな生まれ変わり方をしているとは! もう驚きの連続で、その数々のリアレンジも考慮に入れた曲順の妙に唸らされてばかりなのである。


そうなのだ、この、曲順や曲の終わり方と繋がり方などにも滲み出ている「全体を通してのトータル性」という点でも、この『SCIENCE FICTION』は過去最高の出来なのではないか?と思わせる。ヒカルはいつも「一曲入魂」で、アルバムというのは「出さなきゃいけない」から作ってきただけだ。なので、一曲毎の個性を最優先している為、アルバムにトータルコンセプトを付与する事はなかなか出来ない。作り終わって振り返って、「嗚呼、『Fantôme』は母への鎮魂と性と死のアルバムだな」とか、『BADモード』は周りの人も自分自身も励ます作品だな」とかいうのが“後から視えてくる”ものだった。


しかし、『SCIENCE FICTION』は「2024年の今、宇多田ヒカルのベストアルバムを作る」というコンセプトがハッキリしている。つまり、過去の楽曲/トラックたちを、最新のサウンド・クオリティを取り入れつつヒカルの最近の作風に合わせてリレコーディング/リミックス/リマスターをする、という軸でほぼ総ての楽曲がブラッシュアップされているのだ。こういう作り方は、ある意味今までになかったものだとも言える。


故に全曲聴き通した時の「全体としての充実感」は過去最高だ。普通のベスト・アルバムであれば、自分の昔の思い出と結びつけながら、「こんなに沢山の名曲を書いてきたんだねぇ」とかなんとか回顧的に捉えられるものなのだが、『SCIENCE FICTION』はたった今鳴ってる音が魅力的で、それが2時間26曲にわたってずーっと続く。統一感があるからこその、とんでもなく恐ろしいボリューム感である。


その観点からして(既にヒカル宛に140字で呟いてきたのだけど)、あたしゃこのアルバムのタイトルは「SCIENCE FICTION 2024」がより相応しかったんじゃないかと思い至った。


普通のベストアルバムであれば…例えばMr.Childrenのベストアルバムのタイトルは「Mr.Children 2011-2015」「Mr.Children 2015-2021 & NOW」とかだ。その曲がリリースされた年月日を並べて、今に至ってるよと。


しかし、『SCIENCE FICTION』は総ての楽曲が2024年仕様である。その深度はリレコーディング/リミックス/リマスターでそれぞれ異なるし、中には2023年の曲や2022年のミックスの曲もあるにはあるけれど、どれも概ね「今のヒカル」が手掛けたトラックとなっている為、「2024年の新しい体験」として提供されている。なのでこのアルバムのタイトルは、Mr.Childrenみたいに「SCIENCE FICTION 1998-2022 & NOW」なんかにするよりも思い切って「SCIENCE FICTION 2024」にしてしまう方がより相応しいように思うのだ。


そうなるとこのタイトルはそのまま『SCIENCE FICTION TOUR 2024』という今年のツアータイトルにもダイレクトに繋がっていく。実際に終えたコンサートの実況録音盤の事を普通は「ライブ盤」と呼ぶが、この『SCIENCE FICTION』アルバムは、今のヒカルがツアーでやるだろう曲を悉く今仕様に仕立て上げたいわば「ライブ予告盤」とでもいうべき非常に珍しい立ち位置の作品になる予感がしている。そのまんまということはないだろうが、過去曲のライブでのアレンジはこのアルバムのものをまず基準にとるだろうことが予想されるから。


なので、2022年に遂に待望のライブ・アルバム『Hikaru Utada Live Sessions from Air Studios 2022』をリリースして私を歓喜に咽ばせてくれたチーム宇多田の皆さん、今度は是非そのスタジオ・ライブ盤からもう一歩踏み込んで「ライブコンサートの2枚組実況盤」としてのライブ・アルバム『LIVE CONCERT- SCIENCE FICTION TOUR 2024』をリリースして欲しい。チケットが抽選なのだから尚更これは必要だ。そこまでやってやっとこの『SCIENCE FICTION 2024 PROJECT』は完成をみるだろう。ただのベストアルバムじゃないことは身に沁みてわかった! だから更にこれを推し進めて次のオリジナル・アルバムへと繋いでいくべきだと私は思うのでしたとさ。それはきっと『BADモード』よりも…嗚呼、身の毛もよだつな!

トレボヘSPでも変わらず感じさせた「今のヒカル」


え〜、、、何話せばいい?(ダウンタウンに英語話してみてって振られた時の返しみたいに)


供給過多が過ぎて飽食だわ。抜けた後の虚無感は考えないようにしようそうしよう。昨夜のオンラインパーティーも私飛ばしちゃったり。普段じゃ考えられないわね。



ええっと、まぁいいや、少しずつ触れるか。まずトレボヘスペシャル完全版が解禁になったわね。もう既に少し触れちゃってるけど以後はさらに大っぴらに話せるか。


一聴した感想は


「どこらへんがスペシャル!?」


というものでした。それくらい気負いなく、普段通り。その普段が23〜24年前の1年間の事を指すのが何か不思議でね。あの頃を知ってる人にとっても知らない人にとっても普段通り、普段着の宇多田ヒカルが学校帰りにスタジオに寄って…嗚呼、学校帰りだと普段着じゃなくて制服か(笑)。いずれにせよ、全然スペシャル感がなかったのよね。コーナーの作り方も、選曲も。昔のまんま…そしてそれがそのまま「今の宇多田ヒカル」の表現になっているという不思議な状況。


改変期のスペシャル番組って内容も特別だったりするじゃないですか。振り返り企画だったりまとめ企画だったり。全然そういうのないんでやんの。2時間という長さを除けば、このまんま今でも毎週放送してるような、そんな錯覚に陥る内容で。


これつまり、アルバム『SCIENCE FICTION』のコンセプトそのものなのよね。ベストアルバムを出すのは特別な過去の振り返り企画かっていうと、確かにそれはそうなんだけど、「ヒカルの心づもり」としては、新曲新譜を作る時と、つまり普段と何も変わらなくて、ただ素材が既にリリースしたことのある曲だったってだけでな。なので、リレコーディングしたものもリミックスしたものも、「今の宇多田ヒカル」が作ったものでしかなく、そりゃ新曲と相性がいいよね。


他のベストアルバムは違うと思うんだ。昔の曲が主役で、そこに加わる新曲は添え物?ゲスト?おまけ? 或いは昔を思い起こさせる曲調だったり、逆に今と昔の違いを際立たせる曲調だったり、いろいろあると思うんだけど、主役はいうまでもなく何十曲もある昔の曲で。だけど『SCIENCE FICTION』は違う。主役は自然にGold以降の3曲になっていて、やはりこちらも自然に旧曲たちはそのサウンドに合わせていく格好になっている。合わせていくというのも正確じゃないか、今のヒカルが作るのが新曲で、その今のヒカルが手掛けるリレコーディングとリミックスとリマスタリングは新曲たちと似たテイストになっていくという、ただそれだけのこと。なので『SCIENCE FICTION』は最早宇多田ヒカルの新譜でしかないわよね。


『Tresbien Bohemian 」も同じというか…そもそも、昔に準えてやるコーナーの名前が『This Week’s Top 2』だからね、そりゃ本当に今週のトップツーを発表するだけだよね。それも昔から「今週世間で発表された曲」でなくて「今週ヒカルがかけたいと思った曲」でしかないから、いつの時代にやろうとそりゃ同じになる。お便りを読むのも、自分の新曲を紹介するのも、最近のお気に入り曲をかけるのも、昔のまんま。昔の毎週やってた頃のまんまなのよね。特に昔を振り返る事もなく。


あぁ、昔の口調を再現したりしてたな? それも実は「最近のヒカルがしてること」なのよね。最近のヒカルのしてること…昔の曲のリレコーディングとリミックスとリマスタリングなわけでして。常に昔の自分の声を聞いてる(聞いてた)わけでして。その流れの中で「今もあんな声出るかな?」とか試したりもしてたんじゃないかな。そういう制作状況と今回のトレボヘ収録は軌を一にしてたってことだね。


自然体に拍車が掛かった。つまり、ヒカルの変わらなさが更に揺るぎなくなったというか、いや言い方としては逆か、更によく揺らいでしなるようになったというか。純粋な新曲を作る作業のみならず、過去曲、過去の素材を相手にしても、普段と変わらず今のヒカルを表現する手段として構成できるスキルを今回手に入れたという、そんなターンが今な気がします。なので、このスキルに基づいた今後のライブコンサートは、今まで以上に「たった今の宇多田ヒカル」の魅力を、新曲でも旧曲でも変わらず発揮できる、過去最高のものになる事請け合いなのでした。