無意識日記々

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40代の方がイケイケ!?


トレボヘを聴いてても「ヒカル、喋りが若返ったなぁ」と思う。冒頭で昔のトーンを再現してみせてたけれど、あれってトークだけじゃなく、歌でもやってみたんじゃないかな。リレコーディングする曲を選ぶプロセスの中でまず歌ってみて、何がどう違うのか、変わったところ変わってないところをチェックしていって、過去の自分の歌い方を試しになぞってみていた気がする。


ちょうど今日は『Kuma Power Hour with Utada Hikaru』第1回放送記念日なので、聴き比べてみればいいのだけれど、この頃の、30歳のヒカルの喋りの方が寧ろ落ち着いているくらいだ。最近年齢をクローズアップされる事も増え、「41歳なのにこんなに」と形容されるようになってきたが、確かにアンチエイジングというか、若返ってすらいる印象が強い。まぁ中には老けたなっていう人も居るんだけど、どうやら全体的に鍛えて筋肉質になった見た目の変化を勘違いしてるケースもあるっぽいな。


これ、音楽性の変化にも言えるのよね。前から触れているけれど、あたしは2018年のアルバム『初恋』を聴いて、随分と曲調が落ち着いてしとやかになったなと思ったし、実際同年の『Laughter In The Dark Tour 2018』では黒のロングドレス姿が印象的だった。なるほど40代を迎えるにあたってこういうスローダウン的なモデルチェンジかと思っていたら、2022年のアルバム『BADモード』では再び…というか過去最高にダンサブルな曲が増え、非常に活気に満ちた作風へと変貌を遂げていた。ヒカルも同作制作にあたっては、21歳の時にリリースした『EXODUS』が念頭にあったと言っていたわよね。『The Workout』みたいな扇情的でイケイケな曲が収録されている作品だ。


なるほど、この「若返り」の流れの中にそのまま『SCIENCE FICTION』が入っていると解釈するとわかりやすい。アルバムをバラード『First Love』ではなくよりダンサブルな『Addicted To You (Re-Recording)』から始めたのもそういうことかもしれない。『traveling (Re-Recording)』は最早定番ブランドとなったタイアップ相手の綾鷹すら若返らせる勢いだし、リズムを抜いた『光(Re-Recording)』の持つ幻想美は非常にフレッシュだ。そして新曲群。『Gold 〜また逢う日まで〜』が要請で半分バラードにはなっているがこれも元々ダンスチューンで、『Electricity』の王道四つ打ちぶり(+三連符の絶妙さ)はライブ会場を盛り上げずにはいられないだろう。トドメは『Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー』のSci-Fi Editですわな。イケイケの『BADモード』のイケイケぶりを象徴するど真ん中のダンスチューンをエディットしてビデオまで再編集する重用ぶり。どこまで意識したかはわからないが、結果として『SCIENCE FICTION 』は『BADモード』からの順当な進化形としての立ち位置にきっちり収まっている。やはりもうベスト・アルバムという呼び名は然程適当とはいえず、流石にオリジナル・アルバムとは呼べないものの、「2024年にリリースされた宇多田ヒカルのニュー・アルバム」というくらいには呼んだ方がいいのかもしれない。これを聴いたと聴いてないとでは、次のオリジナル・アルバムへの流れの理解度がまるで違うことになるだろうね。