無意識日記々

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水も滴るイイ音考

イヤフォンをちょっといいのに買い換えた。いやぁ、よく聴こえて嬉しい事この上ない。音のよしあしなんてわからないよ、とよく言われるのだけど、アナログテレビと地上波デジタルの違いを思い浮かべてくれると助かる。

「映像が綺麗になる」というからどんな風かと思ったら、同じものを映せば絵づらの美しさ自体は変わらない訳で(そりゃそうだ)、何が変わったかといえば細かい所までよく見える所だ。即ち違いは鮮明さである。サッカーなんかはちっちゃく映ってた人が誰だかよくわかる、なんていうメリットがある一方、女性キャスターはあてるライトをより白くしなければならないなど、鮮明になったからといって一概に"美しく"なる訳ではない。粗が見えてしまって醜く汚く映る事も有り得るのだ。ここは"決して女性キャスターの事を言っている訳ではありません"と強く否定しておかなくては。逆効果か。

音でも、同じ事が起こる。音が綺麗になる、美しくなるというより、"細かい所までよく聴こえる"ようになるのだ。音の分離がよくなり、輪郭がはっきりする。地デジの視覚効果とおんなじことが起こるのだ。

光の曲は、本当に細かい所にまで小さな音々が散りばめられている。今回、色々と聴き直してみて、えらく印象が変わったのが「ぼくはくま」である。この曲のアレンジはレパートリ中最もシンプルで、声も楽器も輪郭は掴みやすいのだが、今回聞き直してみて、やっと真ん中付近で左右にウネウネ動いてるシンセのメロディが"どういう音符の並びなのか"が把握できた。今まで何千回とこの曲を聴いてきてるのに、不思議な体験である。

いやまぁ、でも、実は個人的には「ぼくはくま」で一番感動したのは、(生歌を除けば)NHKAMの「みんなのうた」で流れてきた時であったのだ。AMのダイナミックレンジというのは極端に狭く、モノラルという事もあって音が凝っているともにょもにょしていてわかりづらいのだが、こういうシンプルな歌の"よさ"を伝える為には、そういうややこしいなんやかんやを捨象してしまってくれるAMラジオくらいの音質の方がよかったりするのである。

アナログテレビなら、女性キャスターのいろんなあれやこれやに惑わされることなく、"画面がのっぺりすることで逆に"美しさが抽出されて眺める事が出来る為、よさ・美しさ・魅力は地デジより伝わりやすいケースすらある訳だ。音楽も同じ事で、メロディや歌詞のよさで真っ向勝負できるかどうかが、音質のよくない局面では試される。だから、光の歌をAMで聴けると無性に嬉しくなるのだ。それが光の"最高傑作"なら、尚更である。

余談になるが、今回携帯プレイヤー用にイヤフォンを買い換えるにあたって、高すぎる品質も考えものだな、と気が付いた。あまりに音がクリアに鮮明になりすぎて、mp3やaccの圧縮音源では、その"粗"が目立ってきてしまい、逆にワンランク下の品の方がその"粗"が均されていい音に聞こえた(だから今回はそっちを買った)。CDの1.4Mbpsの音ではなく、mp3の128〜320kbpsの音を聴く為には、過剰な品質を求めない方がいいようだ。女性キャスターに夢を見続けるようなもので、それが果たして幸せなのかどうかはわからないが…。