無意識日記々

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Passion Has Nine Lives.

光の曲の中には、ただリリースされるだけでなく、曲自体がドラマティックな変遷を辿るものがある。2つのミックス両方を前面に押し出したAddicted To You、アルバムに収録される頃にはリミックスされていたはやとちり、1stのInterludeから発展して楽曲になった言葉にならない気持ち、そして2ndアルバムのタイトル曲でありながらかたちをかえて3rdアルバムの要の位置に配される事になったDISTANCE&FINAL DISTANCE。日本語の光と英語のSimple And Clean。そのS&Cとメロディーを共有する嘘みたいなI Love You。同じくメロディーを共有しあったHotel LobbyとKiss & Cry。そして、先にBallard Versionが発表されるという変則的な展開を見せたFlavor Of Life宇多田ヒカル史上最強のEPを構成したPrisoner Of Love & its Quiet Version。自らのデビュー曲の名をもう一度持ち出したAutomatic Part 2。これだけある。ひとつの曲を書きっ放しにするだけでなく、またこだわり
抜いて新しく生まれ変わらせる。光の、妥協しない強靭な精神力の賜物といえる。

しかし、中でも最もドラマティックに変化したのは、いや、今でも変化・進化し続けている曲といえばPassionだろう。Single VersionにAfter The Battle、Opening VersionにOrchestral Version、更には英語版のSanctuaryがOpeningとEndingの2種類ある。その上、LIVE Versionが3種類、United VersionとIn The Flesh FusionとWild Life Passionも存在するのだ。何とその数現時点で9種類。フルアルバムが構成できる数である。

LIVEバージョンは他の曲にもあるじゃないかと指摘されるかもしれない。しかしそれもせいぜい編曲面での差異である。PassionのLIVEバージョンを個別に数え上げる必要があるのはなぜかといえば、総て曲構成から組み立て直しているからだ。

United Versionは、静かに、まるでafter the battleのように始まる。メロディーをひとまとまり唄い上げたあとそこからSingle Versionに突入する。いわば、after the battleとSingle VersionのUnitedである。

In The Flesh Fusionは、日本語で歌い始めて英語のSanctuaryに繋げてゆく。Passion(Single Version)とSanctuary(Orening)の融合、Fusionである。

Wild Life Passionは中間部のヘヴィパートを経由しつつ、年賀状パートもきっちり歌う、Single VersionとOpening Versionの合体だ。

3通り、総て異なる構成なのだ。

LIVEでの位置付けも非常に重要だ。UTADA UNITED 2006ではオープニングを飾っているし、Wild Lifeでは本編20曲中Eclipseの次の10曲目、いわば中興の祖である。In The Flesh 2010では日本語曲と英語曲の両方を唄うUtaDAのLIVE Styleの象徴的楽曲となった。実際、今日は日本語の曲も唄いますといって最初に唄ったのがPassionだったのだから。

この扱いをみると、今のところ宇多田ヒカルUtadaのアーティスト活動の大きな流れの中で中心となっている楽曲はこのPassion/Sanctuaryであるという事ができるだろう。この進化は一旦ここで区切りとなるか、復帰後もまた某かの変化が見られるのか。光のアーティストシップのパースペクティヴを把握するには、この曲がどうなっていくかでかなり把握する事が出来るようになるのではないだろうか。