無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

20世紀最高のアイドルの話

まぁ今は随分減ったかもしれないが、"所詮アイドル"だなんて言っていると時折足元を掬われる事になる。20世紀最高の音楽集団、The Beatlesだってデビュー時は完全にアイドル扱いで、黄色い歓声を目一杯浴びて活動していた。この時に"所詮アイドル"と言って切り捨てていた人たちは随分と出遅れた事だろう。

後期になればスタジオワークに力を入れ次第にアーティスティックな成長を遂げるようになる彼らも、初期のうちはシンプルなロックンロールサウンドで、人によっては稚拙、人によっては未完成と形容していただろう事は容易に想像可能だ。しかし、ことメロディーとハーモニーに関しては全くもって最初っから図抜けている。全然関係ないけどシャッフルでいとうかなこの歌声が流れてくると切なくなるな。大丈夫かな彼女…。

でだ。ことメロディー&ハーモニーの素晴らしさに関しては、あれだけスタジオワークを駆使して(恐らくヴォーカルだけで48トラックレコーディング)声を重ねている宇多田ヒカルもかなりかなわない感じがする。彼らはデビュー当時超多忙で、レコーディング技術も未発達な時期(モノラルからステレオに漸く移行しようかという時期)だったのにもかかわらずそのアイデアの独創的な事といったら。そりゃ半世紀経っても世界中に影響力をもっているのも頷ける。

彼らの曲は、特に初期に関しては以前も触れた通り2〜3分と(今の基準からいえば)非常にコンパクトで、いわば楽曲の中で特別な事は何も起こらない、起こせないといった風合いなのだが、それだけに展開は全くもったいぶらない。いきなり主題に入り、ハーモニーを重ねてメロディーをまとめ潔く去っていく。今でいうオーソドックスなイントロ〜AメロBメロ〜サビ〜繰り返し〜アウトロ、なんていうまどるっこしい構成は殆どない(なくはないが)。当時の時代性という点も考慮しなければならないが、今聴いてもPopソングとして第一級で通用する…というか未だにこれがお手本、教科書たりえているというのは、なんかもう目が眩む。

不思議なのは、そこまで愛されているのに、このシンプルなメロディー構成を真似るバンドがずっと皆無だという事だ。The Beatlesの影響を受けたアーティストは数知れないのに、そういった点で似ているというケースが案外ないのはどういう事だろうか。

思うに、真似できないのではないか。主題となるメロディー&ハーモニーを提示するだけの強力な素材がないと、このシンプルな構成は曲として成り立たないのだ。裏を返せば、The Beatlesは非常に短い時間でリスナーに「え、たったそれだけ?」と物足りなく思わせずしっかり満足感を与えて去っていけるのである。やっぱり、凄い。

ヒカルの曲もやっぱり当世風の構成をもった4〜5分のものが多い訳だが、そんなヒカルがこのThe Beatlesから学び取れる事は何かあるだろうか、という話からまた次回。