無意識日記々

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そんな突然マジメな顔する曲構成

『甘いワナ』で長年気になってるのが、作編曲の配分なんだよねぇ。当時はそこまでヒカルはサウンド・プロダクションに関わっていなかったのかと思いきや、『First Love 15th』で聴かれるデモ音源の作り込みからしても、結構な割合で手を出してたのかもとも思ったり。そこらへんは判然としない。

サビの構成なのよね。結果として聞こえてくるサウンドはお耳にしてる通りなのだが、これを作り上げるとなるとまずベースラインが先に決まっていてあとからヴォーカルを挟んでいったように聞こえる。リズムの配分がベースラインが主でヴォーカル&コーラスラインが従なのよ。その証拠に、という訳でもないのだがサビだというのにヴォーカル&コーラスは左チャンネルに寄せてミックスされている。それまで中央に居たのに。これはサビでドラムとベースのリズムを前面に押し出そうという構成なんだよね。となると、曲を作る過程ではやっぱりベースラインが先にできていたのかなと。

なので全体の(時間軸上の)構成は、まずAメロでリズムアウトしてヴォーカルが引っ張る、次にBメロでリズムインしてきてヴォーカルとドラム&ベースがタメを張る。次にサビで今度はドラム&ベースが前に出てきてヴォーカル&コーラスを脇に追いやる、という風になっている。

しかし、ヒカルが真骨頂を発揮するのは、その1番の構成を踏まえた上での2番の展開なんだよね。同じようにAメロからBメロに展開しておいて、同じようにサビが来るかと身構えた途端に

『あなたの鎖が心地よくなってた

 あなたの両手に包まれた

 蛍のように光っていたい』

のパートが歌われる。そこまで快活に飛ばしていた曲調が急ブレーキをかけられたようにメロウでリリカルに変化する。ホントこれはヒカルの十八番で、『タイム・リミット』の『遅れずに来て そして迷わずに居て……』のパートなんかもそうだよね。それまでその快活な曲調にのって強気な発言をしていたのに、そこから漏れてくる本音の部分がやけに気弱で健気で儚くて甲斐甲斐しくて、っていう。お陰でこちらはそのギャップにイチコロなのですよ。もう21年間ずっとそう。

……という(時間軸上&空間上の)曲構成を踏まえると、作詞の時点でベースラインが決まってないといけないように思えるので、『甘いワナ〜Paint It, Black』に関しては、かなりの部分ヒカルのインプットが入ってるというか、デモを作った段階で完成度が高かったのではと考えているのでありましたとさ。作詞ってなメロディーラインだけじゃなくてその時に鳴る楽器陣との兼ね合いまでも総て考慮に入れないと決まらないから大変なのよね。……そう!いつもヒカルが〆切ギリギリまで作詞をしている(時にはレコーディング最終日までな)のは、そこまで至って完成されたサウンドを聴かないと見えてこないことがあるからなのですよっ!(過去の本人に成り代わって言い訳してみましたとさ)