無意識日記々

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エコーズ?啓示 ザ・ベスト・オブ・ピンク・フロイド

エコーズ?啓示 ザ・ベスト・オブ・ピンク・フロイド

20世紀最高のロックバンド、Pink Floyd最終作にして最高傑作のベスト盤。60年代デビューのこのバンドが21世紀のスタートと同時に(実際にそうは言わなかったが)自らその歴史に幕を閉じたのは感慨深かった。タイトルは、「Echoes ~ The Best Of Pink Floyd」。Echcoesとは、73年の傑作「Meddle〜おせっかい」のB面に収録されている、原子心母やクレイジー・ダイヤモンドと並ぶ彼らの大作主義の頂点に位置する23分にも及ぶ楽曲の名である。が、この盤では17分足らずにEditされて収録されている。ベスト盤とはいえ、そのタイトルに名を冠しているのだからEditなどせずに完全版を収録すべきだろうに、と思うのだがこれは実は誤りだ。Pink Floyd というバンドの本質は、そのEdit能力にあるからだ。それを如実に表しているのが、彼らのデビューEPと、その後に制作された1stアルバムの両方に収録されている「Interstellar Overdrive〜星空のオーバードライブ」である。

London 1966-1967

London 1966-1967

Piper at the Gates of Dawn

Piper at the Gates of Dawn

最初のEP盤では17分近い演奏時間、このテイクも相当凄いのだが、これを9分に纏めた1st版の星空のオーバードライブは、筆舌に尽くし難い存在感を放っている。まさに、この曲から、いや、この曲がこうやってEditされた瞬間にプログレッシブ・ロックというジャンルの歴史が始まったといっても過言ではない。17分のサート・ロック/サイケデリックが、9分のプログレッシブ・ロックに生まれ変わったのだ。即ち、Pink Floydというバンドは、デビュー時から「Edit」によってその唯一無二の威力を発揮しているのである。そのバンドが、最終作品のタイトルトラックに「Edit」バージョンを持ってきたのは、最早歴史的必然とすらいえるだろう。そう考えて聴くと、これが20世紀後半を支配したフロイドの「辿り着いた結論」に思えてくる。この「Echoes(Edit)」こそが、Pink Floydの最終到達地点なのだ。ま、尤も、この論を信用するならばこのベスト盤に星空のオーバードライブが収録されていて然るべきだが影も形もない。私の中だけの物語なのかもしれない。でも、それでもいいのである。この曲の齎す感動は、「引き継げ」と言っているようにしか、私には聞こえないのだから。