無意識日記々

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「エアとブレス」の話

という訳で「エアとブレス」の話。

ヒカルの歌を語る時に欠かせないのがブレス、息継ぎである。多分ヴォーカル・レッスンを受ける人はこれでもかと叩き込まれる技術だと思うが、果たして、どこでどう切って息継ぎをするかとか、ここまで伸ばすにはどうすればいいかといった話はレッスンされるだろうが、何故こっちで切ってあっちで切らないのか、だとか何故ここは浅くあそこは深いのかとか、全体の構成を考えた上でのアプローチはどれ程為されているのだろうか。まぁ私詳しい事知らないからいいんだけど。

で。まぁブレスに関しては有名だからいいだろう。次の「エア」だ。ブレスが基本的に「息を吸う」時の話なら「エア」は「息を吐く」時の話だ。人は歌を唄う時は、当たり前だが"声を出す"訳だから身体から空気を外側に出している訳だが、この「エア」というのは、有り体に言えば「ハーッ」とか「フゥ〜」とかいう感じで息を吐くというニュアンスだ。

なお、この「エア」というのはここでだけ用いる造語である。専門用語もあるのだろうが調べるのが面倒なのでこの短い用語を便宜的に採用する。ルーツは、昔DREAM THEATERのシンガー、ジェイムズ・ラブリエが自らの歌唱法を指して「エアを入れて歌う」と表現した事に由来する。巧い事言うもんだな、と思ったので印象に残っている。具体的にどんななのかを聴きたい人は「DREAM THEATER Surrounded」或いは「DREAM THEATER Another Day」辺りでググってみるよろし。

ヒカルは、この「エアを入れる」技術が非常に巧い。そして多用する。つまり、子音でいえば「H」にあたる音を歌の中に紛れ込ませる術に長けているのだ。先程、「息を吐く」時の音が「ハーッ」だとか「フゥ〜」だとかだった事を思い出そう。アルファベットで書くとこれはそれぞれ「Haaa」とか「Huuu」になる。人は息を吐く時「H」の音を出す。

普通にハ行を歌うだけなら簡単だが、ヒカルの場合、母音の中に紛れ込ませる。別に独特の技術という訳でもないんだけれど、先述のブレスの個性と併せて用いると、いつのまにかえもいわれぬ「宇多田ヒカルらしさ」が出てくる。たむらさんは縮緬ビブラートの真似は巧いが、この、「エアとブレス」の使い手としては一歩譲る。というのも、タイミングが非常に微調整を要求するので、抜群のタイム感がないと再現に苦労するからである。

この、息を吸う「ブレス」と息を吐く「エア」の組み合わせ。特にヒカルの長母音の歌唱をみる時に重要になってくるので是非覚えておいて欲しい。繰り返しになるが、エアという用語は短くてタイピングが楽な為ここで便宜的に採用しているだけだから、他所で使ったりしないでね☆