無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

「そもそもリマスタリングって何?」

そういえば「そもそもリマスタリングって何?」という疑問に答えていなかった。リミックスやリプロダクション、リレコーディングとどう違うのか。前は料理を比喩にして説明したが、今回は写真を例にとって考えてみよう。

完成した音源を我々がCD等で聴く事は、写真でいえば、現像された一枚の写真を鑑賞する事にあたる。ジオラマを撮影した写真を一枚、想像してみる。

ジオラマを撮影する時は背景となるパーツ、海や山や陸や建物、人物や乗り物などの"パーツ"を配置して撮影する。これを音楽に喩えると、各々のパーツを制作する作業がレコーディング、実際に撮影スタジオで(カメラの前で)ジオラマを作る―即ち、各パーツをどうやって配置して、どのアングルから撮影するかを決めるのがミックス、そして、撮影した写真を現像する過程がマスタリングであるといえる。リマスタリングとはつまり、写真でいえば現像をやり直す作業にあたる訳だ。

当然、写真に写っている内容は変えられない。ジオラマで使うパーツやその配置などは変更がきかない。音楽でいえば、そこで使われている楽器や奏でられているフレーズは変えられないし、その相対的な位置関係も変えられない。

しかし、写真の現像時には、色合いの調節、明度や彩度の変更などが可能となる。ぼんやりしていたり、暗くてよく見えなかったりした音を、この段階でくっきり聴こえるように修正する事は可能な訳だ。

しかも、少々荒業になるが、写真は一枚の平面なので、その一部を歪ませる―トポロジカルな連続変形も可能なのだ。その為、密集していた楽器同士の間に空間余白を設ける事すら出来る。

今回のリマスタリングは、つまり、マスタリング段階で出来る事は粗方遂げたと言っていい。全体的な色合いを爽やかに明快にし、各楽器の分離・境界を設け、全体的に左右に空間を引き伸ばして、このジオラマの主役であるヴォーカルの存在感がより際立つように工夫されている。巧くやったもんだ。


なお、ミックスというのはパーツの配置を変えるだけでなく、パーツの選択や入れ替えも視野に入っている事が多い。つまり、ジオラマ写真に写ってないパーツも、脇から取り出してきて写真に乗せられてしまうのがリミックス作業という訳だ。なので、最初の音源とリミックス音源がまるで違う事もしばしばあるが、リマスタリング音源はそもそも撮影してしまった写真と同じなので、写っているものは変えられない。写っているものの見え方なら少し変えられる。そういう違いがあるのである。

となると、Demoバージョンというのは完全に、まだパーツ制作も終わってない段階での仮撮影みたいなものなので…という話から先は、私がDemoを聴き込んでからになりますね。お楽しみに。