無意識日記々

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A-Cappella-Mixes fix my face

そしてお次はいよいよアカペラの話ですね。

『First Love (A Cappella Mix)』

『初恋 (A Cappella Mix)』

の2曲。

わかりきっていたことでサプライズでもなんでもないのだが、やっぱりヤバかった。これはあきませんよ奥さん。部屋に誰も居ない時に聴きましょう。顔面神経がおかしいことになりますので!

そう、同じテイクなんですよ、『First Love (2022 Mix)』や『初恋』と。配信されてるリミックス音源やリマスタリング音源、即ち、1999年(録音は1998年暮れ)や2018年のオリジナル音源と、ほぼ同じヴォーカルが、後ろの楽器を休ませて収録されているだけ。新しい音は何も入っていない。

だが、歌声1本のお陰で情報量の総てをヴォーカルに注ぎ込める訳で、いやその恩恵で生まれた存在感たるや筆舌に尽くし難い。大前提として、アカペラでも間を保たせるだけの歌唱力がヒカルに備わっているというのがあるのだが、そこから上積みされている繊細な表現の数々には改めて唸らされずにはいられない。

基本、カラオケ・バージョンの逆と言える(論理的には“否定”と呼ぶべきだが)。カラオケで削られた音が全部こちらのアカペラには入っている。よって、バックコーラスもがっつり鳴り響いているのだが、特に『初恋(A Cappella Mix)』よ、お主はヤバすぎるだろう…っ!

そもそも今回『First Love』がリード曲ということでそちらが取り上げられる機会が多いが、ドルビーアトモスに引き続きアカペラでも、サウンドのブラッシュアップという点では『初恋』の方が完全に主役と言える。元々のオリジナル音源を手掛けたのが今回のリミックスとリマスタリングを手掛けたスティーヴ・フィッツモーリスなだけあって、サウンドの細部まで熟知しているのがかなり大きく影響している雰囲気だ。ミックスというのは時間を掛ければ掛けるほどクォリティが上がるものらしく、今回は前回(2018年)の成果を踏まえてより楽曲の魅力を引き立てるサウンドを志向したのだろう。即ち、ストリングスのスケール感とバックコーラスの豊穣さである。

今回スティーヴはドルビーアトモスでつんざくようなストリングスを、そしてこのアカペラで包み込むような静かでいてダイナミックなバックコーラスを、オリジナルより更に大胆に強調してサウンドを仕上げている。嗚呼、この何人もの宇多田ヒカルに囲まれているような感覚…! なんだか綾波レイみたいだわ。ヒカルの代わりは居ないけど、歌声を重ね合わせるだけならどうとでもなる!

しかしほんと歌声の隅々までよく聞こえる。1998年と2018年では声の出し方からしてまるで異なるのもハッキリわかる。それぞれにそれぞれ独自の魅力があるところがまたいい。

付加的だが、今まで散々聴いてきたのに気づいてなかったバックコーラスもあったりしてね。『初恋』のDメロ、『欲しいものが…』の部分、ディレイド・エコーってより、バックコーラス自体をワンテンポ遅らせて入れていたとは全然気づいてなかったよ。後からオリジナルを聴き直してみても、うむ、聴き取れない。特にバックの演奏も盛り上がる場面なので、こうやって声のみにしてくれた事で際立ったということか。これは新鮮な発見だったね私にとって。

これだけのトラックをアナログ限定に収録しておくのは誠に惜しい。アナログの販売が殆ど動かなくなったら、改めて配信するようにはからってくれませんかね? もっと沢山の人々に聴かれるべき珠玉の2トラックですよこれは。