無意識日記々

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Demons & Draculas

一応クレジット上は「Demo Version」という事になっているが、これは看板に偽り有り、だ。いや、慣例に従えば、だな。通常はDemo Versionとして公式リリースする場合、もっと完成度の高いものを発表するのが通例なのだが、このFL15の場合は、曲によっては曲として聴かせる事すら意図していないものまである。ここまで来るともうDemonstration(実演)というよりDocument(記録)である。

これは一体どういう事なのか。豪華盤でも、えらく派手に(全曲にわたって)作りかけの歌詞を公開してくれている。これじゃまるでサイヤ人の…じゃなくて、制作過程のバーゲンセールだ。

ヒカルってここまであからさまに"途中"を公表した事があったっけ? Passionの没歌詞が公表された時えらく興奮した事を覚えているが(そういえばあの没歌詞ちゃん、どこをどうとっても現在のPassionの歌メロにのっかりきらないんだけどあれどうやって歌ってたんだろう??)、つまりそれだけレアケースだった筈だ。それがここに来て、である。

勿論、First Loveというアルバムが完成品として世に出ていて、皆がもう"聴き終わっている"というのがいちばん大きい。まだ完成していない制作過程の作品について何か公表するような事はしないだろう。それはわかる。加えて、今までこうやって自分の作品を振り返るという作業をした事がなかったというのも大きい。なかなか、お膳立てしてもらわないと、特にこういうクリエイター(祝・来日!(違います))気質の人は次から次へと新しいマテリアルにかかりきりになっていくものなのでなかなか過去の作品と向き合おうという動機がない。記念盤を出すという事で促された向きがあるのは間違いない。

にしたってここまであからさまなのは凄い。本当に「今これ作ってるんだけど」という感じがしてくる。いや、そういう感じしかしてこない。個々のバージョンから細かな点大まかな点多岐に亘って種々の完成品との違いが浮き彫りになってくる。よくもまぁ許可したものだ。というかヒカルが自ら探し出してきたんだっけ? こんなでも収録してるのにそれでも没になったAutomaticの英語バージョンは一体どんな出来だったのか激しく気になるなぁ…。

ともあれ、これらは本当に貴重な音源である。料理について食べた時に美味しければいいやという人も、厨房を覗かせてもらえるとなったら「どれどれ」と身を乗り出すだろうに、一口食べる毎に「これ隠し味にお酢使ってます?」とか「下拵えの時に…」とかすぐ気になっちゃう向きからすればそりゃあもう鼻息を荒くせざるを得ない(私の事です)。こういう企画は、今後もどんどんやってもらいたい。っつっても、こういうのがリリースされるイコールヒカルのアーティスト活動休止期間に他ならないので、それはそれでちと複雑な気分かもわからない。人間って贅沢だわねぇ。