無意識日記々

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PLANiTbの意味は未だ解らず仕舞

伊藤政則がラジオでトム・ベティ&ザ・ハートブレイカーズジョジョクラスタの皆さんにはお馴染み、老師トンペティの名前の元ネタだ)の"The Last DJ"をかけた時、ふと気が付いた。「あぁ、"Beautiful World PLANiTb Acoustica Mix"(以下BWPbAM)のサウンドって、彼らの影響もあるのかな」と。発売当時は私ダイアー・ストレイツ(こちらもジョジョクラスタの皆さんには言わずもがな)の名前を出したり、R.E.M.の名前を出されたりしていたのだが、いちばんしっくり来るのはトム・ベティなんじゃないか。

アコースティック主体のロック・サウンドにエレクトリックとのバランス、クラップの使い方など、オーソドックス過ぎる為誰の影響なのかとか考えるのは野暮というか無意味な気もするが、トム・ベティのキャリアの長さを考えると彼らの名前を出すのがいちばん落ち着く。ただ、リミキサーのお馴染みラッセルの世代が聴いていたかというと、ちょっとわからないのだが。


まぁそれはいいや。で、今なら書いてもいいだろう、BWPbAMって、そんなによいミックスだった?

2009年当時、破公開とともにネットでダラダラこの曲の感想を読み漁ったのだが、驚くほど否定的な意見が少なかった。たぶん、今でもそうだろう。オリジナルより評判がいいくらいである。ちょっと待ってよと言いたくなる。

恐らく、ではあるが、これは、映画の出来がよく、また、エンディングの引きがこれ以上なく「ここからどうなるのだろう」感が強かったところに、あの曲調で、よく知ってる歌詞とメロディーが流れてきたから、というのが実際のところなのではないか。つまり、楽曲の、リミックスの評価というより、あんまりにも映画のエンディングにハマり過ぎていて何も言う事が無かった為に、BWPbAMの高評価が自動的に定着してしまったのではないか。そう考える。

なので、この曲を単体でみた時には、そこまで皆に気に入られているという訳でもないのでは、と私は思っている。思い出補正というか思い入れ補正というか。オリジナル以上にこのヴァージョンは"EVAの為"という側面が強かったのが利いた。

オリジナルのBeautiful Worldは、勿論第一にはEVA序の主題歌として名を知られたが、それと同時に年間Top20に入る邦楽市場におけるヒット・ソングでもあったのだ。TVでも生歌唱を披露したし、ラジオでも入念にプロモーションした。余談だがこの時の髪型は結構気に入っている。

つまり、Beautiful WorldはEVA抜きでもそれなりに認知されていて高評価だった一方、BWPbAMは徹頭徹尾EVAの為の曲だった。ヒカルはこの曲のプロモーションは行わなかったし、この曲の配信時のジャケットは100%EVAである。ただの手抜きと言われればそれまでだが、ヒカル側のアートワークになっていないというのは大きい。Eternally Drama Mixの配信シングルを買ったらジャケットが堀北真希だったというレベルだ。それは言い過ぎ。

つまり、この曲に巡り会った殆どのケースはEVA絡みだったのだろうという所が、オリジナルとは違う。そういう中で、EVAと切り離してこの曲を評価しろと言っても無茶だり無理だし無意味だ。この曲に宣伝費をかけていないのだから、ヒットソングになる必要もない。よく考えたら、リミックスとはいえ宇多田ヒカルでこういうケースは非常に珍しい。さっき名前出したEternallyDMは、殆どオリジナルと変わらないからドラマの為のミックスという程ではなく、"隠れた過去の名曲を引っ張り出してきた"感じだから、やっぱり随分違う。


という訳で、あれから5年以上が経ったし、もう桜流しという強力な後継も居る(もうそろそろ2年前なのかよっ!?)のだから、ここらへんで虚心になって、BWPbAMを聴き直してみる事をオススメする。そうすると…この気だるい感じが何とも言えずいいんだよなぁ。元々のメロディーの強さや歌詞の説得力もそのままだし、若干素朴で裸な感じもいい。なかなかに優れたミックスだと再確認。


…流れからいくと「ほら、大したことないでしょ?」と言うべきだったか(笑)。でも、心にもない事は言えないもんね。いいものはやっぱりいいですよ。