無意識日記々

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リフ萌え談義

Hikaruの書いたリフの最高傑作は、前も書いたようにCOLORSだと思うが、"使い方"まで含めて考えるというのならば私はGoodbye Hapinessこそ至高だと思う。あのSynergy Chorusな。あれがオープニングで出てきた時点でもう既に完全ノックアウトなのだが、あのフレーズがサビの後半に出てくるアイデアには心底やられた。COLORSはサビのアタマからリフがぐんぐん来るいわば王道の使い方なのだがGBHは後ろからぐいっと顔を出してくる。あの満をじして感といったらない。しかも中間部のブレイク部分でも待ってましたといわんばかりにせり上がってくる。それはまるで晴れ渡った元日早朝の初日の出を富士山越しに拝むかのような神々しさだ。チベットのヒマラヤの方がいいか。どっちでもいいや。なお、NHKで一瞬だけヒカルがSynergy Chorusに対して"歌唱指導"を行う場面が映ったのだがその時の鼻歌がさり気ない癖にやたら美声で「人に頼まんとおまぃが歌ったらええがな」とテレビに突っ込んだのはもう四年半
も前の話か。この話ここでするのも三回目だしな。

リフ自体の最高傑作はCOLORSとうっかり断言してしまったが、冷静に考えるとテイク5となら誠に甲乙付け難い。寧ろ、一瞬にして聴き手を星空に吸い込んでしまうような"歌の世界への吸引力"でいえばこちらの方が上ではないか。COLORSはまるで棚引く雲がこれから訪れる出来事への予兆を運んでくるような、イマジネーションを刺激するサウンドとフレーズになっているが、テイク5の場合このフレーズこそがハイライトで、真っ暗闇に流星群が煌めいて、いや、もう流星に乗って宇宙に飛び出していくようなそんな感じがする。それまんま銀河鉄道やんけ。そうなのだ。歌詞の世界をたった3音だか4音だかで表現しきってしまっているところがこの曲の凄い所で。いや寧ろ、先にこのフレーズが飛び出てきていてその余りの存在感に歌詞を乗せようがなかったから『歌詞を書くのを諦めて詩を書いた』とヒカルに言わしめたのではないか。何より、『なんだ、私生きたいんじゃん』という気付きそのものが、作中でカムパネルラがジョバンニに与えた最高のプレゼ
ントだった訳で、いやはやもうこの曲の"生死を天秤に賭けた迫力"は、そりゃあ制作中に精神やられても仕方ないわと納得せざるを得ない。

テイク5のリフは幻想美と切迫感の共存という奇跡を生み出しているが、ヒカルのリフで幻想美といえばPassion/Sanctuary、切迫感といえばBe My Lastだろうか。3部作の最初の2作という事でこの2曲は左右に振り切れ過ぎたヒカルの振り幅そのものという気がするが、単にフレーズの美しさだけをみればやはりどちらも日本より世界で受け入れられるべきではと思わせる。Be My Lastの英語版、10年経ったし作ってもいいんじゃないの。

そのBe My Lastの切迫感からみれば端正な美意識の方に振れたのがSAKURAドロップスだろうし、切迫感を切り詰め過ぎて洗練された絶望感が美を生み出したのが桜流しだ。こういう並べ方をすると、ここらへんがヒカルの"日本人としての美意識"かなという思いもしてくる。

ならば、とUtadaの方をみればなにしろ一発目に名リフ中の名リフを擁する"Devil Inside"が飛び出してきていたのだから、いやはや、今更ながらこの天才の刻み込んできた歴史の恐ろしさには戦かざるを得ない。そして、そこにみられたのがSAKURAドロップスをも上回るかの"和風美意識"だったところが印象的な訳ですよ、えぇ。英語アルバムの冒頭で日本人としてのアイデンティティをこんな絶妙なバランス感覚でぶっこんでくるという"地味なアナーキー"な。いやはや。EXODUSアルバムはHikaruの全作中最も"リフ押し"なアルバムで、従って私の最も好きな作風なんだけど、いやホントまたこういう作品作ってくれないかしらん。

うーむ、やたら無駄に書き散らしてしまった。もともと纏めるつもりがなかったからわざとなんだけど、この人の過去に作った楽曲について語る時私はおもちゃ箱をひっくり返したような気分になるのよ。どれから遊べばいいか迷うあの感じ。それを出したかった。このワクワク感、少しは伝わってくれてたらいいんだけど。