無意識日記々

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生まれた順にフレーズを並べた曲か

『荒野の狼』の特殊さは、その曲調の落差である。イントロとアウトロを直接聴き較べると、とても同じ曲とは思えない。何故こんな曲になったのか。

自分自身の為にヒカルとは全く関係ない全然別の具体例を挙げながら考えてみたい。自分がよく知っているから、以上にこの選曲の意図は無い。

アイアン・メイデンの2003年の(って、えぇ!? もう14年も前なの??)12thオリジナル・フル・アルバム「死の舞踏(ダンス・オブ・デス)」の6曲目に収録されている「明日への扉ゲイツ・オブ・トゥモロー)」という曲は同作の中でも下から数えた方が早い不人気曲で(人気があるのは「レインメイカー」やタイトル・トラック、そして「パッシェンデイル」だ)、確かにそんなに派手な曲ではない。イントロが流れ出してきた時にはその緊張感の希薄さに「あぁ、一曲前の5曲目がタイトル・トラックで、8分半あるエピック・ソングだったから、ここらへんで箸休め的な捨て曲が来るのかな」と思ってしまうところなのだが、なんのなんの。これがヴァースからブリッジ、そしてサビからギターソロへとどんどんアクセルをふかすように緊張感が高まっていくのだ。曲を聴き終わる頃にはとてもこの曲を捨て曲として通り過ぎれる気分ではなくなっている。確かに本来は捨て曲ポジションの筈なのに同曲がきっちりフックラインを構成したものだから、お陰で同
作でいちばんフックの弱い曲はアルバムのオープニングを飾る一曲目にして1stシングルであった「ワイルデスト・ドリームス」になってしまった。37年前のデビュー当時から今に至るまでこのバンドは1stシングルをアルバムの「最低品質保証曲」としてリリースしてんじゃないかと毎度疑う。普通は「最高品質保証」なんだがな。それはさておき。

明日への扉」が、そのイントロからすれば随分と出来のいい楽曲になった理由は、恐らくこれがジャム・セッションから作り上げられた構成そのままになっているからだろう。即ち、フレーズが、生まれてきた順番通りに楽曲中に並べられているのだ。(と私は推測する)

まずはギターのヤニック・ガーズがイントロのギターを弾く。ここまではそうテンションの上がる感じではない。そのリフを聴いたドラムのニコとベースのスティーヴが「ではこんなフレーズはどうだ」と言わんばかりに演奏に参加してきてバンドは次第に熱を帯びていく…その様子がまるでドキュメンタリーのように封じ込められたのが「明日への扉」という曲なのではないか、とそう思えるのだ。


では。『荒野の狼』は、ヒカルの単独作ではあるが、それは「明日への扉」のように、フレーズの生まれてきた順番通りに構成された楽曲なのだろうか。つまり、確かにイントロとアウトロでは全くと言いたくなる位に別の曲調になってはいるものの、それはとても自然にフレーズが連なって生まれてきたものなのだろうか。今回は長くなったので続きはまた次回のお楽しみ、で。