無意識日記々

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『Good Night』を引き立てる名脇役

ペンギン・ハイウェイ」の名前が出てきたので『Good Night』の話でも。

お姉さん役の蒼井優は準主役と言っていい役どころだが、同作ではその他の脇役のたちの演技も光っていた。ウチダくんを演じた釘宮理恵などはその代表例だ。脇役の力量が高いと作品全体にぐっと締まった印象を与える。要所々々でバランスをとってくれるからである。

同作のエンディングを担った名曲『Good Night』のサウンドにも魅力的な脇役がいらっしゃる。主役であるヒカルのヴォーカルよりずっと出ずっぱりなのにあらゆる場面でサポートに徹する、エレクトリック・ギターが今回の話の主役。

エレクトリック・ギターといっても、殆どディストーションをかけずにクリーンなままのサウンドだ。故にその出音は地味極まりないが、それだけにゆったりと爪弾かれた時の滋味風味はとても味わい深い。

イントロではアルペジオを崩しながら主旋律を奏でるグランドピアノの音色を左側から優しく補助してくれている。歌が入ってくるとベースラインとシンクロしたりストリングスの真下に入り込んだりけたたましいドラムサウンドの影に隠れたりもする。サビで漸く解放されて伴奏がギター1本になりさぁ漸く目立てる場面かなと思いきや最も地味な「ひたすらルート音を単調なリズムで並べるだけ」という役回りを押しつけられてしまう。不憫ギリギリである。

しかし、当然ながら、これがよいのだ。『Good Night』の落ち着いた優しいサウンドを創り出しているのはこの地味ながら弾かれっ放しのエレクトリック・ギターであると言っても過言ではない。楽曲中ずっと鳴っているのにずっと引き立て役。ラスサビのブレイクでやっと真ん中に来て一閃、目立つギターソロを弾かせて貰えるのかなと思った瞬間に全楽器が襲いかかってくる場面などは涙無しには語れないが、だからこそ最後まで鳴ってくれている事にほっとする。静と動の抑揚が大きいこの『Good Night』という楽曲において、健やかなる時も病める時もずっと一緒に寄り添ってくれていたギターくんだからこその安堵感である。この曲の全体の空気を決めているとすら言っていいだろう。

試しに、イントロからアウトロまでずっとギターにのみ耳を傾けてみればいい。脇役として主役たちを助けて生きる生き方というのがどのようなものか、如実に感じ取れる筈である。結構泣かせるぜ。

そして、この優しい脇役のギターがあったからアルバムで次曲にあたる『パクチーの唄』のギターがよりしんみりと響くのだ。いつ聴いてもこの曲順は素晴らしい。いつかライブで歌う事があったなら、初回だけでもこの順番で演奏してみて欲しいよね。