無意識日記々

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『あなた』という曲の力強さ

『あなた』。まだ我々は極一部しか聴いていないのだが、映画関係者にはもうフルコーラスで聴かせているようだ。封切りが12月9日ならまだもう少しなら引っ張ってもよかったんだろうにもう完成している。少なくとも、この間ドラムパターンに悩んでいた曲は『あなた』ではないだろう。

記事には監督と主演の2人による「『あなた』を聴いた感想」が載っている。

堺雅人高畑充希のコメントが対になっているのがイヤでも目を引く。

堺:「映画のなかで愛した、高畑充希さん演じる妻に、もう一度あいたくなりました。」

高畑:「撮影中の、旦那様を愛しい愛しいと思っていた気持ちが聴いているうちにガッと蘇ってきて、また亜紀子さんに出逢わせていただいたような気分です。」

お二人とも「映画の中での気持ち」に戻っていたのだ。気付きはってるかどうかわからへんけど、これは主題歌として物凄い事やで。「劇中で流れてた歌を街中で耳にして不意に映画の世界の感覚を思い出す」ってのと、似ているようで全然違う。撮影を終えるまで2人はこの歌の事を全く知らなかったのだ。それは堺の「撮影がおわってからきいたのが、くやしい。この曲をふまえて、もう一度演じたい気持ちです。」というコメントからもわかる。つまり、2人にとって『あなた』は、映画と全く関係ない曲だったのだ。それを聴いて映画の世界に戻される、戻りたくなるというのだからどれだけ『あなた』が映画のエッセンスをひっつかんで離していないか、これだけでわかるというもの。まさに山崎監督の言う通り、「宇多田さんの歌には、(中略)魔法のような力が有ると思います」よ、本当に。いや「ような」じゃなくてまさに魔法でしょ。

映画のストーリーのいち場面を切り取った歌詞が含まれている、というだけでは堺と高畑は「懐かしい」としか思わない。2人は超売れっ子なのでクランクアップ後はもう別の役に入り込んでいるからだ。その2人を内側から引き戻せるだなんて、なんて力強さだろう。ちょっと俄かには、信じられない。しかし2人とも示し合わせたように、ただ懐かしがるだけでなく実際に「鎌倉ものがたり」の役に"なって"いる。少し考えさせてほしい、という位強力だ。

さてこうなると作品に触れる順序が悩ましい。『あなた』の配信日は12月8日金曜日。恐らく12月7日木曜日の23時過ぎにはダウンロードできるようになっているだろう。一方映画の封切りは12月9日土曜日。配信を断食して朝一の上映を選び初聴を映画のエンディング?にもってこようとしても30時間以上我慢しなければならない。悩ましい。

また、その威力を本当に実感したければ、堺高畑ご両人と同じ順番、つまり映画を見終わった後に、僕らの場合はエンドロールを伴って聴くのがいちばんいいのだ。しかし私が果たして宇多田ヒカルの新曲を聴くのを我慢できるのか。いや、我慢はできる。「聴くのを我慢してる間に死んだり病気や怪我をして聴けない状況になる」のが何より怖いのだ。悔い無く生きるには我慢しないに限ります。