無意識日記々

mirroring of http://blog.goo.ne.jp/unconsciousnessdiary

昔とは英語の歌の位置付けが違う

『Fantome』で日本語の歌を歌う能力が上がり、過去のパフォーマンスを「雑」と言い切れるまでになったHikaru。では英語の歌はどうなのだろう。

英語タイトルの日本語曲を連発していた頃に発表した『Simple And Clean』と、全曲日本語タイトルの楽曲を収録した『Fantome』アルバムの後に発表した『Don't Think Twice』は、受ける印象や楽曲の立ち位置が随分違う。

デビューから数年のヒカルの軽薄なイメージといえば"バイリンガル"で、英語が凄く上手い人と思われていた。一方、『Fantome』をリリースした後のヒカルのイメージはどちらかといえば「日本語を大切にする歌手」として捉えられているように思う。

これは、楽曲の発表の順番にもよるかもしれない。『Fantome』から最初に発表された楽曲は(2012年に単曲リリースされていた『桜流し』を除けば)『花束を君に』であった。この歌は全編日本語で、如何にも日本語の響きを大切にした歌だと捉えられた筈。昔の日本を舞台にした連続テレビ小説のオープニングテーマというのも大きかったが、やはり、カタカナ語ですら『メイク』たったひとつしかないという徹底した日本語しばりの歌詞とそれを活かした美しいメロディーの組み合わせが「宇多田ヒカル復活」の第一印象だった、という図式はそんなに突拍子の無いものでもなかっただろう。もしこれが、2016年の4月にまず『It's a lonely ...』のリフレインを連呼する『道』の方だったらかなり印象は変わっていたのではないか。

ここからの大きな流れの中でクローズアップされたヒカルの日本語の歌唱の丁寧さ。今やベテランとして「日本語大衆音楽の良心・最後の砦』としての期待を一身に背負っている。

しかし、最初期の"軽薄なイメージ"の通り、ヒカルは英語の歌が歌える。母語が2つあるようなものだから当然といえば当然なのだが、この今の流れの中では昔ほどこの点が強調されなくなっていた。

そこに差し込まれてきたのがこの「キングダムハーツ3」の、いや、"Kingdom Hearts 3"のtheme songである『Don't Think Twice』だった。果たしてこの歌でのヒカルの歌唱はどんなものなのか、また稿を改めて詳しく分析する。