無意識日記々

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#裸婦抱く いちばん中途半端な位置

『光』はアコースティックギターのカッティング気味なコードから始まった訳だが何が吃驚したってその音色の美しさな。横浜アリーナという会場のお陰かはたまた私が座った席のポジションがよかったのか(ギタリスト側だったしね)色々考えられたのだが、多分あれは本当の出音自体の美しさだろう。即ち、どの会場でもどの席でも『光』のアコースティックギターによるイントロは美しく響く、のではないだろうか。

人によるかもしれないが、『光』のアコースティックギターのフレーズは私にとってまさに「光が射してくる」ようなイメージだ。天使の梯子みたいなね。そのイメージを今までで最も強く体現したのがこの今回の『Laughter in the Dark Tour 2018』公演のギターだったと断言していいと思う。最早この曲はヒカルが歌い出す前に勝負あったという感じさえした。

勿論、と言い切れてしまうのがまた凄いんだけど、ここでもヒカルの歌唱はほぼ完璧で、どこで息継ぎすればいいんだというほど高音が連なるあのサビのメロディも一切誤魔化す事なく真正面から歌い切る。歌唱技術は年々上達するかもしれないが声域や声量といった肉体的基盤がものを言う要素は経年と共に衰えていく事を考えると、こうやって「歌手・宇多田ヒカルの全盛期の歌唱」を生で体験できるのは途轍もなく幸運であり神様に感謝しなくては明日から生きていけない程ですよ。いや、いちばん感謝しなきゃいけないのは当然歌ったヒカル自身に対してなんだけども。当たり前だ。

で。前回からの続き。今回の『光』のアレンジはストリングス成分が大幅に増強されていたが、それは『20代はイケイケ!』の『Simple And Clean』のようにフル・ストリングスで終始しっとりというのではなく、快活で若々しいオリジナルのバンド・サウンドを主軸としながらそこにカウンター・メロディやオブリガートとしてストリングスのメロディが切り込んでくる、というスタイルだった。これによりまるでヒカルが歌で弦楽器隊と会話をしているような楽しげな感覚が生まれていた。普通あそこまでオブリガートが派手だと煩わしく感じたり態とらしさが前に出て来たりするものなのだがヒカルの歌唱が余りにも完璧な為、まるで会場を覆い尽くすように主導権を握れていて全く動じる事がない。そのスケール感を見越してのストリングス成分大幅増強だったとしたらなかなかに慧眼であったといえる。冷静に考えて、今まで聴いてきたライブでの『光』の中でも最高の出来だったんじゃあないだろうか。そんなパフォーマンスをショウの中盤のいわば“いちばん中途半端な位置”で披露してしまったのだから本来なら「勿体なすぎる…」と言いたくなるところなんだが、何度も何度も繰り返してきたようにこのショウのハイライトたる後半のパートが凄すぎるのでこの采配で妥当なのである。ますます気が遠くなっていくよホントにもう…。


のちのちまた触れるだろうが、この『Laughter in the Dark Tour 2018』公演の昔の(つまり『Fantome』と『初恋』収録曲以外の)曲たちは押し並べてゆっくりめのテンポで演奏されていた印象だ。これがただの印象なのかそれとも本当にテンポが抑えめだったのかはスマホ動画が数々上がっているから各自それぞれで確認してもらうとして、このライブレポは当然私の印象を書く場所なので今の所そういう風に書いておくことにする。テンポがゆっくりなお陰でヒカルの歌声がよりじっくり堪能できた訳ですよ。ふふふ。『光』は特にそう感じられたなー。いやぁ、ライブって、本当にいいもんですね…

……って、別に終わらないぞ(笑)。まだ半分も来てないからねー。このまま次回に続きますよっと。