無意識日記々

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僅か5分で世界観設定

ふぅ。あたしもその、「共感疲労」とやらが溜まってたのかもわからんねぇ。連日侵攻関連のニュースばかりだし。今迄のジェノサイドと違って世界大戦危機としての側面が強いから仕方ないっちゃ仕方ないんだが。

でもまぁ、前回のエントリは、ちょっとスッキリした。よっぽど投稿せずに自分で書いただけにしとこうかと思ったけど、まぁ投稿してよかったのかもね。誰かに読んで貰うと新しい文脈が出来るからかな。

ここを読んでるような人はかなりの割合で普段からインターネットでテキストを漁っているタイプだと思うので、今現在侵攻関連のニュースに触れないで済ますのは難しい。その上、日々地元の感染状況なんかも把握しないといけないからねぇ。情報に疲れるというのはかなりの割合である事だわな。

そんな時に『BADモード』アルバムの響くこと響くこと。制作時点では侵攻関連のニュースの割合は少なかったからそんな意図も少なかったと思うのだが、この時期にこういう癒し方をしてくれる作品がいちばん身近にあるというのはホントに有難い。

1曲目の始まり方が静かなのがいいのよねぇ。これはもう最近ずっとそうではあるんだけど、『道』にしろ『Play A Love Song』にしろ『BADモード』にしろ、静かに優しく始まってくれるから、こう、いつの間にかアップテンポなリズムに巻き込まれられてるのよね。気分が疲れてたり落ち込んだりしていても、そこから元気になれていくというか。この「導入の工夫」というのがひとつ作品に没入していける理由になっているかなと。

『This Is Love』みたいに衝撃的に始まるのもまた好きだけどね、でも今は『また今度にして』って思うことも多いかな。

こういう「入り込みやすさ」が、アルバムで聴いたときに既発曲の印象を変える要因の1つにもなっていて。更にタイトルトラックではその展開の中での振り幅が凄い。この1曲でアルバム全体の多様性を表現しているから、リスナーとしては「世界観の設定」が凄くやりやすい。いや、やるというか、自然に納得させられて貰えるというかね。

「世界観の設定」ってのは非常に重要で。フィクションでも、その世界では魔法は使えるか、人は生き返るか、妖怪や魔物は存在するのか、影が奪われたりするのかしないのか…その世界の設定自体は自由でも、一旦その世界に入ってしまった後は、世界観の適用は常に厳格に行われないと興醒めになる。

『BADモード』はそれを押し広げる。生ギターも打ち込みもあるよ、ドラムもパーカッションもあるよ、ストリングスにホーンセクションもあるよ。リスナーにも話し掛けるよ、日本語でも英語でも歌うよ、ダンスもアンビエントもロックもあるよ、普通の曲展開はしないよ、危なっかしいワードも飛び出しちゃうよ、一方でウーバーイーツとかNetflixとかイマドキの単語も入れちゃうよ、楽しくも歌うよ切なくも歌うよ、リズムもテンポも沢山バリエーションがあるよ…こういうアルバムの「世界観の設定」をたったの5分で成し遂げてしまうタイトルトラック『BADモード』、紛れもなくこのアルバムのタイトルトラックに、第1曲目に最も相応しい宇多田ヒカル史上最高傑作のひとつだと思います。共感疲労で塞ぎ込んでしまっているあなたも、気が向いたらまた『BADモード』のPLAYボタンを押してみてね。ほんとマジで癒されるから。